第22話 眠れる都市

 月光に照らされて東京は今日も眠りにつこうとしていた。デジタルウォッチが午後11時半を表示していた。赤羽亮は晴海埠頭にスカイラインを停車させ、缶コーヒーを飲んでいた。汽笛が闇の中に木霊した。ラジオからはトークショーが流れている。

 助手席のドアが開いた。

「おまたせ!」と、身長が185センチメートルもある長髪の男がコンビニの袋を手にぶら下げて助手席に乗った。

 伊達明、亮の小学校からのダチだ。

 明が袋からサンドイッチ🥪を出して亮に渡した。

「しかし、ここのところ本当に俺たちお宝にありついてないよな」

 2人はトレジャーハンターなのだ。

「最後に手に入れた宝は6月30日のサファイアだったな」

 亮がタバコを咥え火をつけた。

「で、こんな夜中に何の用だ」

「これから行く宝石店に侵入する」

「場所は?」

「明石町のヴェルサイユだ。運転変わってくれないか」

「OK」

 明が運転席に乗り込みギアをドライブに入れヴェルサイユへと飛ばした。

 

 PM11:58 明石町 ヴェルサイユ

 明石町は隅田川河口部の西岸に位置し、隣の湊と合わせて鉄砲洲と俗称されるほか、広義の築地に含められることがある。聖路加国際病院の所在地で、区関係施設が数か所存在する。明治に外国人居留地が置かれ、西洋文化と関わりが深い。

 明は店の近くに車を停めた。

 回りに誰もいないことを確認してから、2人は黒い服を身に纏い覆面を被った。

 亮がルフィ、明がゾロ。

 明がトランクからアタッシェケースを取り出し、足早にヴェルサイユへと走る。

 店はガラスドアに閉ざされている。

 もちろん、窓ガラスを割って中に侵入なんて素人じみなことはやらない。ガラスの割れる音に気付かれる可能性がある。

 亮がズボンのポケットからキーピックを取り出した。どんな鍵でも開けてしまう優れものだ。

 亮が鍵穴にキーを差し込んだ。

 後ろで明が見張っている。ガチャリと施錠が外れる音がした。

「開いたぞ」

 ドアをゆっくり開け素早く中に入り、中から錠を掛けた。2人はすぐ異変に気付いた。防犯カメラは壊され宝石がいくつか盗まれていた。

「先客が」

 明が舌打ちをした。

 亮がダイヤの入ったガラスケースに手を伸ばした瞬間、1発の銃声が轟いた。

「何だ!?」

 思わず亮は声を上げた。

「裏手だ!行ってみよう」

 2人は音のした方に向かった。 

 裏口のドアの前でガードマンが倒れてる。

 亮がいくつかの足音を追い、曲がり角を曲がった。3人組が白いワゴンに乗り込み猛スピードで消え去った。

「69-03」

亮はナンバーを暗記した。裏口に戻り明に声をかけた。

「ガードマンは!?」

 明は首を横に振った。

「ダメだ、死んだよ」

「何も殺すことはないのに」

「サツが来る前に早いところズラかろう」

 明が腰を上げた。

「なぁ、この事件追わないか!?ゴホゴホ……」

 亮は咳をしながら言った。

「何言ってんだよ。そんなことはサツに任せとけよ。クシャン!」

 明がクシャミをした。

「汚い手で盗みを働くとは許せん!ハックショーイ!」

 亮がわざとらしいクシャミをした。

「盗みにキレイに汚いもないだろうけど。クシャン、畜生!」

 明がポケットティッシュがほしいのにズボンにもバッグにもなかった。洋服の袖で拭いた。

「きたねーな」

 亮はパチンコ屋でもらったポケットティッシュを渡した。

「まっ、暇だし手伝ってやるよ」

 明は鼻をかみながら言った。

「助かる」

「その変わりお宝は山分けな」

「いいぜ」

 2人はスカイラインに戻った。

「また、運転お願いするぜ」

「了解」

 亮は助手席に座ると再びタバコを吸い始めた。

「俺にも一本くれよ」

 亮は明にマルボロを渡した。

 明が口に咥えるとライターで火を点けてやった。

 

 


 


 

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