第3話 僕と彼のこと①
旧姓・長峰琳、25歳。既婚者である。
現姓・
僕に『お見合い』の打診があったのは、二十歳の時だった。この時の僕は大学三年生。
「どうして僕に…?」
それが僕の第一声。心の声が外に出てた。
最初は政略的なものだと思っていた。次男とはいえ僕は『長峰』の息子だし、男とはいえΩだから子供も産める。ウチとの繋がりが欲しい家は幾らでもあるだろう。
けれど、それを言葉にした僕に、お父さんは首を横に振る。
「誰が可愛い琳を政略になど使うか」
じゃあ、何で僕?…と詳しく訊けば、どうやら相手の『一目惚れ』らしい。僕はますます首を傾げた。
それこそ「何で…?」だ。
首を傾げる僕に、お父さんはたぶんお見合い写真?を差し出してきた。恐る恐る開いてみる。
写っていたのは、スーツをビシッと着こなした男性。柔らかく微笑んでいる。見た目の印象だけなら、イケメン? 優しそう? けれど、相手の
「会った事があるのか?」
「ううん。ないと思う。結構、歳上だし。何処で僕を見初めたのかなぁ…?」
う~ん、と唸る僕に、お父さんはお相手の素性を詳しく教えてくれた。
「その釣書にも書いてあるが、相手の名前は
「高槻カンパニー…。あ、ホントだ」
釣書を確認すれば書いてあった。
「でもお父さん、僕、本当にこの人に会った覚えないんだけど…」
「では、直接的には会った事も話した事もないんだな?」
「? 直接的…?」
「
「パーティー……。………。あ、思い出した。え、でも僕、ずっとお父さんと
華英は僕の姉だ。お母さんと瑠偉くんはそれぞれ知り合いに挨拶に行っていたけれど、二十歳になって、初めて社交の場に連れて行ってもらった僕は、元々人見知りな所もあって、特に知り合いもいないし…で、ずっとお父さんにくっついてた。
「華英と? ないな。相手は『息子さん』とはっきり言った。しかも『Ωの』と」
「……………」
間違いなく僕だね。瑠偉くんはαだから。
僕、Ωの義務としてネックガード着けてたし。
「私も高槻とは私的にも会社としても付き合いはない。ただ、私の顔はこの業界の者なら大抵知っているから、私と一緒にいたから『息子』と判断したんじゃないかと思う」
「……………」
一目惚れ…か…。本当かなぁ…。
自分で言うのも悲しいけれど、僕は自分の容姿が人目を惹くほど優れているとは思わない。兄姉は容姿端麗で背も高く、誰が見ても一目でαと判る。対して僕は、中途半端…? はっきり言って僕の容姿はΩらしくない。両親がαだからなのかどうかは分からないけれど、身長はΩにしては高い171cm、見た目も一般的なΩほど華奢でもないし、顔も大して可愛くない。両親も兄姉も美形だから僕もそれなりに整った顔をしているとは思うけれど、家族に囲まれると僕だけ霞む。僕程度の顔なら何処にでもいるくらい、特筆するような特徴もない。ホント、自分で言ってて悲しいけれど…。いっそβでいいんじゃない?と思うけれど、3ヶ月に1回巡ってくる発情期が、僕がΩだと知らしめる。家族が僕を『琳は可愛い』というのは身内の贔屓目なんだ。
で、僕が何を言いたいのかというと、つまり『一目惚れ』なんて信じられないって事。
「琳、お前はもう二十歳だ。Ωとしてなら結婚適齢期だろう。だが、まだ学生でもある。この縁談には政略的なものは一切絡んでないのだから、断ることも出来る」
お父さんが言った。はっきりと。政略は絡んでないって。という事は、見合いの打診にあたり、その辺の話は出なかったという事か。
「このお見合いの申し込みの事、お母さんは知ってるとして、華英ちゃんと瑠偉くんは知ってるの?」
「いや、二人には言ってない。先に話したら問答無用で潰しにかかるからな。琳の気持ちが優先だというのに。まずは琳に聞いてからだと判断した」
「うん、ありがとう。正しい判断だと思うよ。
僕、会ってみるよ。どんな人かは会ってみないと分からないし、近くで僕を見たら、がっかりして向こうから断ってくるかもしれないしね」
最後は少し自嘲気味になってしまう。
「そんな事はないと思うが…。
分かった。見合いの日取りを調整しよう。当日は父さんが付き添うが、それで良いか?」
「うん。ありがとう。お父さん」
こうして僕は、のちに『夫』となる高槻彰宏さんとお見合いをすることになったー。
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