第4話 火消し組と半鐘の役目とは?免疫の暴走を江戸で例えるとどうなるのか?

江戸の町では、火事が起きたときに駆けつける火消し組がいました。火の手が上がった家を取り壊し、延焼を防ぐのが彼らの役目です。免疫の世界では、これがキラーT細胞にあたります。

火付け強盗団が家に火をつけてしまうと、火消し組はすぐに現場へ向かいます。燃えた家をそのままにしておくと、町全体が火の海になってしまうため、彼らは迷わず家を壊します。これは、感染した細胞を取り除き、ウイルスが増える場所を断つ働きです。

しかし、火消し組がいつも素早く動けるわけではありません。火事の発見が遅れれば、火の手は広がり、被害は大きくなります。そこで重要になるのが、半鐘を鳴らす役目です。免疫の世界では、これがメモリーT細胞にあたります。

半鐘は、過去の火事の記録をもとに鳴らされます。一度経験した火付け強盗団が再び現れたとき、半鐘は迷わず鳴り響きます。「あの火付け団が戻ってきたぞ」と町中に知らせるのです。これにより、火消し組もさすまた職人も、迷わず動き出すことができます。これが、体が「一度かかった病気に強くなる」仕組みです。

しかし、江戸の町にも例外があります。奉行所が扱う似顔絵があまりに多く、どの火付け団が本物なのか判断できなくなると、町は一気に混乱します。あちこちの半鐘が一斉に鳴り響き、火付け強盗改め――つまりサイトカイン――が狭い一区画に雪崩れ込むのです。

本来は町を守るための人々ですが、あまりに多くが集まりすぎると、住民もろとも将棋倒しになってしまいます。これが、免疫の世界で「暴走」と呼ばれる現象です。

コロナの流行時に見られた劇症肺炎も、この暴走が一因と考えられています。火付け強盗団そのものよりも、町を守ろうと集まった人々が密集しすぎてしまい、狭い区画で押し合いへし合いになり、結果として町の建物が次々と倒れていくような状態です。体の中でも同じように、免疫の働きが過剰になり、肺の組織そのものが傷ついてしまうことがあります。

火消し組と半鐘は、町を守るために欠かせない存在です。しかし、彼らが動くには、奉行所の冷静な判断と、町全体のバランスが必要です。免疫もまた、強ければ良いというものではなく、整った働きがあってこそ私たちを守ることができます。

次回は、こうした免疫の働きを利用した「ワクチン」の仕組みを、江戸の比喩で見ていきたいと思います。

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