第3話 火付け強盗団だけを捕まえる“さすまた”とは?免疫の道具作りを江戸で例えると?

江戸の町には、火付け強盗団を捕まえるために、特殊なさすまたを作る職人がいました。免疫の世界では、これが抗体を作るB細胞にあたります。彼らは奉行所から渡された似顔絵をもとに、犯人だけを確実に捕まえる道具を作り出します。

奉行所――ヘルパーT細胞――が岡っ引きから受け取った似顔絵を確認すると、町中に指示が出されます。「この顔の火付け強盗団が動いている。至急、捕縛用のさすまたを作れ」と。すると、さすまた職人のようなB細胞たちが動き出します。

職人たちは、似顔絵に描かれた特徴を細かく読み取り、その人物だけを捕まえるための“取り餅つきさすまた”を作ります。柄の先には、犯人の衣服や体にだけ吸い付く特殊な餅が塗られています。これが、抗体が特定のウイルスにだけ結合する仕組みにあたります。

完成したさすまたは、町中に大量に配られます。江戸の雑踏の中でも、火付け強盗団だけを「御用だ御用だ」と捕まえることができます。これが、抗体がウイルスを無力化し、動きを封じる働きです。

しかし、このさすまたには弱点があります。火付け強盗団が変装してしまうと、餅がうまくくっつかなくなるのです。鼻の形が少し変わったり、着物の柄が違ったりするだけで、さすまたは犯人を捕まえられなくなります。これは、ウイルスが変異すると抗体が効きにくくなる仕組みと同じです。

インフルエンザの火付け団が毎年違う装束で現れるため、毎年新しいさすまたを作り直す必要があるのも、このためです。コロナの火付け団はさらに変装が巧みで、従来のさすまた職人だけでは対応が難しいことが分かってきました。

さすまた職人の働きは、町を守るうえで欠かせません。しかし、彼らだけでは対処できない火付け団も存在します。そこで登場するのが、火事場に駆けつけて家ごと取り壊す火消し組――キラーT細胞です。

次回は、この火消し組と、過去の火事の記録をもとに半鐘を鳴らすメモリーT細胞の働きを見ていきたいと思います。

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