第2話 下っぴきが描く“似顔絵”とは何ですか?免疫の仕組みを江戸で例えると?
私たちの体の中には、江戸の町のように、表には見えないところで働く人々がいます。町の治安を守るために、まず最初に動くのは、下っぴきのような存在です。免疫の世界では、これがマクロファージと呼ばれる細胞にあたります。
下っぴきは、頭が良いとは言えませんが、行動力だけは一人前です。怪しい家を見つけると、とりあえず押し入り、家財をひっくり返し、何が潜んでいるのかを確かめます。これは、マクロファージが体内に侵入した異物を無差別に飲み込む働きに似ています。
もし運よく火付け強盗団――つまり病原体――を見つけると、下っぴきはその場で犯人の似顔絵を描きます。これが免疫の世界でいう「抗原断片」です。病原体を細かく分解し、その一部を“特徴”として切り出すのです。
しかし、下っぴき自身には、その似顔絵をどう扱えばよいのか分かりません。そこで登場するのが、岡っ引きの役目を持つ細胞です。岡っ引きは下っぴきから似顔絵を受け取り、それを自分の掲げる札として複製し、町中に示しながら奉行所へ向かいます。
この「似顔絵の受け渡し」と「掲示」が、体の中で行われている抗原提示の仕組みです。岡っ引きが掲げる札は、今この細胞がどんな異物を扱っているのかを周囲に知らせる役割を果たします。
ただし、岡っ引きにも得意不得意があります。全国から江戸に呼ばれた岡っ引きたちは、それぞれ扱い慣れた火付け団が違います。ある岡っ引きはコロナのような火付け団の似顔絵をすぐに見分けられる一方で、別の岡っ引きはまったく気づかないこともあります。これが、人によって病気への強さに差が出る理由のひとつです。
こうして、下っぴきが描いた似顔絵は、岡っ引きの手によって奉行所へと届けられます。奉行所では、次にどのような対応を取るべきかが判断され、町全体の防衛が本格的に動き出します。
次回は、この奉行所――ヘルパーT細胞――がどのように似顔絵を扱い、町に指示を出していくのかを見ていきたいと思います。
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