とある生徒の企み

とろり。

第1話 呪いの少女


「この学校の呪いの少女について知ってるか?」


 ケイが少しニヤついた顔で俺に訊いた。初めて「呪いの少女」なるものを聞き、またケイが漫画でも一気読みしたんだろうな、と憂う。

 俺が答えないでいるとケイはその少しニヤついた顔を一歩分近付けて再び同じことを訊いた。両手を挙げ、参ったと降参する身振りで「知らない」と答えた。

 ここからケイの説教のように長い「呪いの少女」の説明が始まった。その話しをケイは得意げに俺に訊かせて優越感に浸っているようだった。全ての説明が終わると誇らしげに胸を張り、俺にを見せた。

 すなわち「呪いの少女」が書いた手紙だという。そんなものを何でお前が持っているんだ? お前が「呪いの少女」か? など野暮なことは言わない。俺はケイの話しに合わせてを拝見した。


「これ、どう思う? 全部『呪』の文字で埋まってるじゃん。怖くね?」


 コピー用紙に印刷された『呪』の文字は、紙一面を埋め尽くしていた。を見た数秒は確かに薄気味が悪かったが、次第にその文字に慣れてしまった。当たり前のようにただそこに『呪』という文字が並んでいるだけだった。

 ケイに出所でどころを訊くと掲示板に貼ってあったものらしい。


「勝手に取るなよ」

「いや、怖いじゃんよ。しかもこんな謎の多い張り紙、他に見当たらないからさ」

「……」

「というわけでユータロ、解読を頼む」

「は? 解読も何も全部『呪』の文字じゃないか」

「そこを何とか!」


 ケイはその紙を俺に押し付けるようにして帰っていった。

 放課後、最終下校時間まで余裕があった。俺はその謎の紙にもう一度目を落とした。大量の『呪』という文字が、視覚を混乱させ軽い眩暈すら感じる。そして、規則正しく並ぶ『呪』はもう『呪』には見えなくなっていた。口だの兄だの変に部首や旁に気が向く。

 だが、一つだけおかしいところが有った。たった一つ、『祝』という文字が混ざっていたのだ。これはタイピングミスではない。意図的に仕組んだとしか考えられない。俺はしばらく考えた。そしてケイの言っていた掲示板に足を運ぶ。


一二三ひふみ高校 生徒座席』


 ケイの剥がした掲示板の跡にこの学校の座席なるものを示唆する文言があった。手に持つ「呪」のコピー用紙と照らし合わせた。そして、俺は小さな閃きのような微弱な電流が脳内に流れるのを感じた。

 「呪」と「祝」の位置。ぱっと見では一体なんのことやら分からない。しかし、これがだとするならば……

 最終下校までにはまだ少し時間があった。職員室にはまだ担任が残っている。俺は職員室で担任にお願いをし、三年A組の名簿と座席表を借りた。

 そのまま、頭にある一つのもやもやを払うべく俺は三年A組の教室に向かった。教室に入りA組に所属する生徒の名前を確認する。


「い、……あった」


 次いでこの悪戯を主催した張本人の席を確認した。


「なるほど、な」


 全てのピースがカチッとはまる音がした。俺はスマホを手に取るとケイに一言LINEをした。


『犯人はじゃない。だったよ』




















 規則的な「呪」と「祝」の羅列は席の位置。

 そしてたった一つの「祝」という文字はある女生徒の席を表す。

 「」の中の「」が表す女生徒は……


 三年A組 加奈子




――了――




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とある生徒の企み とろり。 @towanosakura

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