第5話 みんなで七五三を祝おう!!

「それはもちろん、地球征服の成功だ!」

 咲良が胸張って答える。

「……地球の神様に、それを願うのはどうなんでしょうね」

 と、大雅が眉尻を下げた。


「じゃあ大雅兄ちゃんは、何を願ったの?」

「早く昇進できますように」

「……わたしの七五三なのに、自分のことを願ったのか?」

「……大佐が、ですよ」


「ママは?」

 パパがママを振り返る。

「銀河系すべての幸せ」

 ママの答えに、みんな「おおーっ!」と歓声を上げる……が。


「……いや、不服は無いのだが、私の七五三なのだよ……」

 と、咲良。

「地球の神様の守備範囲を越えてると思うけど……」

 と、大雅。

「うんうん、さすがママだねぇ」

 と、パパ。


「そう言うパパは、何を願ったの?」

 咲良が聞き返す。

「この町の氏神様にふさわしく、この町の人のささやかな幸せです」

 パパが答える。

「……だから、わたしの七五三だと……」

 咲良が少し不満そうに口を曲げた時、銀河ハイツの前で大塚さんが手を振っているのが見えた。


「七五三おめでとうございます。咲良ちゃん、本当に綺麗よ」

 大塚さんが笑顔を向ける。


「神社に行かれたんですね」

 大塚さんが「うふふ」と口に手を当てて、パパに小さく言った。

 パパは「はい」と満面の笑みを返す。


「神社にね、他にも七五三がいたよ」

 咲良が大塚さんに報告した。

「ああ、そうでしょうね。でもきっと、咲良ちゃんが……」

「あ、ほら。あそこにもいる」

 大塚さんの言葉を遮るように、咲良が指さした。


 白い被布に、ピンクの振袖を着た女の子が、お父さんらしき人と手をつないでいる。


 大塚さんの目が、いっぱいに開かれた。


「ばぁば!」


 女の子の可愛い声に、大塚さんが走り出していた。


 ああ。

 大塚さんの一番可愛い七五三が来た。

 大塚さんにとって、全宇宙で一番の……。


 パパはふっと空を見上げる。

「さすがは氏神様ですねぇ、仕事が早い」


 通りの先に、1台の乗用車が停車していた。

 その後部座席に、人がいるのが分かる。

 車は後ろ向きに停まっていて、座席の人は後ろ頭しか見えない。


 その人はきっと振り向かない。

 その人はきっと車を降りない。

 パパは、そう思った。


 でも。

 それでも……。



「さぁ、千歳飴を配りながら、商店街へ戻ろうか」

 パパは咲良の手を引いた。

「結菜ちゃんにも見せに行く約束してるの。飴、あげてもいい?」

 咲良が見上げてくる。


 なるほど、影の功労者は結菜ちゃんだというわけか……。

 パパは思わず苦笑いをする。


「もちろんだよ」


 これは千歳飴どころか、お饅頭も付けてあげないとだ。

 二丁目更科へ行く前に、うぐいす屋で買い足さないと。

 そんなことを考えながら、パパは咲良の手をつないで、歩いて行った。




 その夜。

 天野さんちの食卓には、お祝いの御赤飯と、二丁目更科で頂いた海老天が、どーんとのせられていた。

 けれどまだ、誰も手を付けられなかった。


「……これ、いつになったら食べ終わるのだ?」

 と、咲良。

「なかなか終わらないですねぇ」

 と、パパ。

「早く海老天が食べたい……」

 と、大雅。


 3人は黙々と千歳飴を舐めていた。

 舐め始めたのは良いが、なかなか舐め終わらない。


「なんでこの飴はこんなに長いのだろう……」

 と、咲良。

「子供の忍耐力を付けるため、でしょうかねぇ」

 と、パパ。

「早く赤飯が食べたい……」

 と、大雅。


「銀河系で一番、長い飴?」

 ママが首を傾げる。

 3人は揃って「はぁ〜」とため息をついた。


 天野さんちが、七五三の御膳を囲めるのは、もう少し時間がかかるようだった。



おしまい

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天野さんちと七五三を祝おう 矢芝フルカ @furuka

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