乾くまで、このままで
体育館から教室までの長い廊下を、僕たちは言葉少なに歩いた。
真理子が歩くたびに、わずかな衣擦れの音が響く。彼女が今、ブルマーの下に隠している「秘密」を思うと、僕の心臓は早鐘を打った。
放課後の教室には、もう誰もいなかった。
西日が差し込み、机や黒板を茜色に染めている。
「……鍵、閉めて」
真理子が僕の顔を見ずに言った。
僕は入り口の鍵をかけ、カーテンを閉める。外界からの視線を遮断すると、真理子はすぐにその場で、重たくなったブルマーに手をかけた。
「ん……っ」
衣擦れの音と共に、濃紺の生地が太腿から下ろされる。
二人の情事の余韻を残したブルマーは、どこか頼りなく床に落ちた。
「すごいことになってる……。これじゃ、気持ち悪くて歩けないわ」
真理子は少し顔をしかめると、ポケットから薄い刺繍入りのハンカチを取り出した。
そして、躊躇いながらも身体を拭う。
「あ……んっ」
敏感になっている肌に布が触れる刺激に、彼女の背中が小さく跳ねる。
白いハンカチは、瞬く間に僕たちの行為の痕跡を吸い取っていった。
「もう……ハンカチ、ダメになっちゃったじゃない」
真理子は恨めしそうに僕を睨むが、その頬はまだ上気したままだ。
一通り身支度を整えると、彼女はハンカチと脱ぎ捨てたブルマー、そして隠し持っていたショーツを取り出し、三つまとめてビニール袋に乱雑に押し込んだ。
「着替えるぞ。風邪ひくからな」
「うん……」
僕は背中を向けて制服に着替え始めた。
カッターシャツに袖を通し、ズボンを履く。日常の姿に戻っていくにつれ、さっきまでの熱に浮かれた時間が夢だったかのように思えてくる。
衣擦れの音が止まった。
振り返ると、真理子もすでにセーラー服の上着に袖を通し、胸元のリボンを結んでいるところだった。
下半身には、紺色のプリーツスカート。
しかし、僕はある違和感に気づいた。
彼女のスクールバッグの中には、着替え用の予備のショーツが入っていたはずだ。だが、彼女がバッグを開けた形跡はない。
「真理子、下着……履かないのか?」
僕が小声で尋ねると、真理子はスカートのプリーツを整えながら、何でもないことのように答えた。
「履かないわよ」
「え?」
「だって、まだ少し……熱ってるし。それに」
彼女はスカートの裾をほんの少しだけ持ち上げ、ニヤリと悪戯っぽく微笑んだ。
「まだ敏感だから、締め付けられるのが嫌なの。……乾くまで、このままで帰る」
ひらり、とスカートが揺れる。
プリーツの奥、頼りない素肌のままであるという危うさを想像するだけで、僕の喉はカラカラに乾いた。
「さ、行きましょ。保健委員長は忙しいんだから」
真理子は鞄を肩にかけると、スカートの下に「秘密」を抱えたまま、涼しい顔で教室のドアを開けた。
歩くたびに素肌が擦れる心許ない感触を、彼女は今、どんな顔をして味わっているのだろうか。
制服姿の彼女と並んで歩く帰り道。
風が吹いてスカートが揺れるたび、僕は誰にも言えない共犯者のような背徳感を感じながら、彼女の後を追った。
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