貪る唇

限界だった。これ以上、彼女のペースで弄ばれていたら、僕がどうにかなってしまう。


「……っ!」


僕は衝動的に、目の前で動く彼女の細い手首を掴んで止めた。


「え……?」


驚いて顔を上げた真理子の腕を強く引く。

彼女の軽い身体は、反動でいとも簡単に僕の胸元へと引き寄せられた。


「もう、喋るな」


言い終わるかどうかのタイミングで、僕は彼女の潤んだ唇を塞いだ。


「んっ……!?」


最初は驚きで硬直していた真理子だったが、僕が強引に舌を押し込むと、すぐに身体の力が抜け、僕の背中に腕を回してきた。


ガツン、と歯が当たるほどの、不器用で貪るような口づけ。

口の中に、彼女の甘い唾液と、激しい運動の後の塩辛い味が広がる。


「ふ、ぁ……ん……」


真理子の喉から、艶めかしい声が漏れる。

さっきまでマイクを握り、全校生徒の前で理路整然と筋肉の解説をしていたその唇が、今はただ僕の舌を求め、情熱的に吸い付いてくる。


短パンを脱ぎ捨てた僕の下半身に、濃紺のブルマーが押し付けられる。

布越しの柔らかさと、直接触れ合う肌の熱さが、脳髄を痺れさせる。


「はぁ……っ、佐藤、くん……」


一度唇を離すと、真理子は酸素を求めるように荒い息をついた。

その瞳はとろんと濁り、口元からは銀色の糸が引いている。

いつもはキリッとしている保健委員長の、あまりにも無防備でだらしない表情。


「……観察、終わりか?」


僕が意地悪く囁くと、彼女は僕の首に腕を巻き付け、今度は自分から唇を寄せてきた。


「ううん……まだ、実技が残ってるでしょ……」


彼女の熱い吐息が、僕の唇にかかる。

僕たちは理性のタガが完全に外れたまま、埃っぽい倉庫の床へと、絡み合うように倒れ込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る