第4話 嫌われる理由
山岸は、私が仕事をきちんとするのが嫌いだった。
外勤の仕事は、慣れれば十五分で終わる。
それを彼は、毎回一時間半かけて戻ってくる。
行き先欄には、いつも適当な地名が書かれていた。
気づかれようが、関係ないと思っているのだろう。
仕事が嫌いで、嫌いだと言わないことだけが上手い。
ある日、彼は言った。
「勉強だけしても、頭でっかちで動けへんやろ」
皮肉の形をした自己紹介だった。
経験だけが長く、何も知らない人にだけは言われたくない言葉だった。
山岸は管理者が嫌いだった。
私が判断に疑問を持った日、彼は背中から煽った。
「援護射撃するから、行け行け」
私は援護など望んでいない。
自分の意見は自分で言う。
その日が来ると、山岸は休んだ。
ややこしくなりそうな日は、いつも事前に消える。
正村は、三年先に入っていた。
言い方だけが強く、芯は臆病。
私が言い返さないのをいいことに、意味の通らない怒りを投げてくる。
慣れた。感情は、ぶつける側だけが疲れる。
そして、後から入ってきた彼女。
場の空気を読む力だけが突出して、他は空洞。
ここから、話は歪み始める。
ある日、私は気づいた。
自転車に、盗聴器がついている。
周囲の反応が、それを教えていた。
私が何も話さないから、聞きたいのだろう。
理由は単純で、行為は犯罪だった。
試しに、少し離れた場所で芝居を打った。
犯罪名を並べ、専門家に相談する、と声に出す。
彼女の名前を出してみる。
反応は、わかりやすかった。
昼休み、彼女は家に戻り、食事も取らずに帰ってきた。
なぜ、こんなにポーカーフェイスを守れない人たちが、
こんなことをするのだろう。
その後、さらに大きな線を越えた。
私の鞄から携帯が抜き取られ、ロックを解除され、
中身が撮られて、回された。
正村は、その情報を小出しにして脅した。
私は笑って受け流した。
振り返れば、兆候はいくらでもあった。
壊された弁当箱。
消えた自転車カバー。
はたき落とされた携帯。
私は、何をされても反応しない。
だから、ここまでしないと、彼らは満足しなかったのだ。
正しいまま、壊れていく HAKU @sub-ni-up
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。正しいまま、壊れていくの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます