EP04 なぜ僕が?
地球へ隕石が落下してから1日目
「なぜ僕が?』
頭の中に響く少女の声に僕は問いかける。
それは究極の二択を迫れる事へのささやかな抵抗、あるいは拒絶反応だったかもしれない。
ここは夢の中だろうか?
さっきまで四条さんといっしょにいたはずなのに、いるのは何処ともしれない薄ら暗い闇が覆う無機質な空間だ。
────この選択は全地球人の内、無作為の2000万人に向けて向けられています。
「2000万人?」
現時点の地球人口は80億人・・・で合っているのかな?
そのうちの2000万人けして多くない数だ。
なんの基準があって当機がその中の1人に?
────この選択は全地球人の内、選択者の資格のある1000万人に向けて向けられています
人数が一気に半分に減った。
何故?原因は?選択者資格?????
「教えてくれ!なんで僕が?」
────選択者は無作為に選ばれます。地球人類の中から正しい判断の出来る者。研究機関の有識者、知識人、作家、学者、思想家、世捨て人、夢追い人、理想家、良識人を中心に選ばれています。
同時に結果と選択に偏りが生まれないように過激な思想を持ちえない人間を無作為に抽出しています。
そして倫理観に縛られず、且つ痛みを伴う決断に後悔や罪悪感、葛藤を感じる人間も重視し中庸な感性を持つ者を求めています。
この声の主=隕石の少女が選択者に何を求めているのか分からない。
『地球が壊滅する前に、全地球の人類の生命と引き換えに当機に力を下さい。』
不平等な取引にもほどがある。人類側にとってなんのメリットもない。
「無理だよ、そんな決定権・・・僕なんかには」
────あなたはただ選択してくれればいいのです。
・・・無理だよ。
地球に隕石が落下してから2日目
天から響き渡る“隕石の少女の声”に僕は答えなかった、いや答えられなかった。
全人類の命を差し出すなんてまっとうな交渉じゃない、そんな権利が一介の人間にあるはずない。ましてや僕のような普通の人間にあるはずがない。
いきなり全世界に突き付けられたあまりにも無慈悲な選択。
これがSF映画ならば地球支配を目論む悪の宇宙人に対して人類が総力を結集し一大反攻作戦が開始!・・・されるところだが、けしてそうはならなかった。
何故ならすでに大局は決しているに等しいからだ。
地球には大穴が穿たれ地球滅亡は誰の目にも明らかだからだ。いや僕自身実際に見たわけじゃないが街のみんなもそう思っているし、不確実な終末論に街はすでに大混乱だ
可能性としてはそれ自体が侵略者の嘘という可能性も無くはないが、もはや人類にはそれを確かめる術は無かった。それぐらいに世界は混乱と混迷を極めていた。
────少なくとも僕が住むこの街においては。相変わらず街は濃い霧で覆われ外部からの情報は寸断。テレビやインターネットの電波も届かない。
噂では車で街の外の様子を見に行った人がいたようだが、その人曰く周囲の街も同じような状況らしい。
そしてこの間も時間は無情に過ぎていく。
「────今日も学校に来ているんだね」
「他にやる事も無いから・・・ね」
学校の教室、そこには昨日のように僕=波多野六郎太と四条みゆきの姿があった。
隕石の少女を名乗る人物への世界中へ向けた声明から1日が経っていた。
他にやることがないというのは現状をしてあまりに端的で的確な表現だ。僕ら地球人には何も出来る事は無い、出来るのは“隕石の少女の声”に答える事だけだ。
もはや地球は壊滅まで残りわずかだ。
・・・といってもそれを確認する術はどこにもないのだけれど。
隕石の少女が言うには地球壊滅までは残り24時間を切っている。
四条さんはいつものようにピシッとした制服を着て学校へ来ていた。そしてそれは僕も同じだ。
「律儀なんだね。もう授業もないんだし、わざわざ制服を着て学校に来なくてもいいのに」
「それはお互い様でしょ?」
やることが無いのは紛れもない事実だ。
もし仮にいま授業を受けたとしても、学んだ知識を生かせる未来なんて決して来ないのに・・・。
地球に隕石が衝突して48時間。
隕石の少女の声が響いてから世界はずいぶん多くの事が起こり世界は様変わりした。
────事態1:
隕石の少女が世界中に放った宣言から少しして街の北部にある火山が数百年ぶりに大噴火。
その方角をみてみると焼けたように空が赤く燃えている。おそらく噴出した溶岩が山麓を焼き山火事を起こしたのだろう。
噴火が起きた証拠に街には大量の火山灰が降り注いだ。
────事態2:
そして火山の噴火と同じくして震度4ほどの地震が頻発。(今度は本物の地震だ)
衝撃波を、免れた建物も相次ぐ地震によりもひとつまたひとつと倒壊。地震の後には地割れや地面の隆起が起こり道路は壊れ、河川はその流れを変え街は瞬く間にその姿を変えていく。
地球に大穴が空いたのだとすれば地下のプレートや火山活動に異常をきたしているのだろう。
────事態3:
火山灰の影響で街には黒い雨が大量に降り注ぎ、街中の建物や道路を粘土製の泥でドス黒く染めていった。
さらに激しい雷雨と突風も巻き起こし台風規模の豪雨が街を破壊するように降り注ぐ。
こうした災害が数時間のうちに連続して巻き起こったのだ。こうなればもはや地球滅亡は誰の目にも明らかだろう。
隕石の少女の言葉は、異常災害の頻発というあまりにも大き過ぎる信憑性を伴って僕らの日常を徹底的に破壊していく。
────選択者が10万人まで絞り込まれました。
この間も選択者の選別は進んでいるようで、現在の選択者は10万人まで絞り込まれたようだ。
「この選択者ってやつが実質の地球滅亡のカウントダウンなのかな?」
「そうかもしれないわね、でもそうじゃないかもしれない」
天から鳴り響く隕石の少女のカウントダウンが無常に地球の終わりを告げていく。
その現実感の無さすぎる世界の終わりにあって僕たちふたりはいたって冷静だ。現実感が無さすぎると人間は混乱する感情すら失ってしまうらしい。
「ねえ波多野くん?この残っている選択者ってどこの誰なんだろうね?」
「分からないよ」
そうなのだ。依然選択者の選定はその数を絞りつつあるが、僕ら人類に誰が選択者候補なのか知る術はない。
「もし仮に私たちがその選択者だとしたら」
「・・・だとしたら?」
「波多野くんはどうする?全地球人類の生命を、あの自称隕石の少女に差し出す?」
「そうだね、もし僕なら・・・」
これはたらればの話、世界がこうなる前だったら僕はどう答えただろう?
まあ今の現実もいまいち現実感が無さすぎて、そう考えると自分たちの事なのに他人事としてしか考えられなくなる瞬間がある。
「もし僕に選択権があるなら、どっちも選ばないかな」
「選択しないって事?」
「だって癪じゃないか、いきなり現れて地球を滅茶滅茶に破壊して、そのうえ地球を壊した張本人が生き残った人たちの命すら奪うなんて」
これは人類代表としてのささやかな抵抗だ。もし仮にこれが殺人鬼に家族を殺された状況だとしよう。
大切な家族を奪った張本人が、残された人たちに対して「私はあなたの家族を殺しました、私には力が必要です。なのであなた方の命を下さい」
もしこんな事を言われたらYESと答える人はいないだろう。
「・・・そうだね、私もそう答えるかもしれない。」
四条さんは「けど・・・」と続けたそうな表情をしているが、続く言葉を言えずにいる。
「けど?」
「・・・ううん。そもそも隕石はどうして地球にやって来たんだろうって」
「そんなの分からないよ」
「それにどうして力を欲しがるの?地球人の生命が力になるのならこんな大災害なんて起こさない方がもっと多くの生命を奪えるでしょ?」
確かににそうだ。
現在残された人類が何人かは分からないが、隕石の衝突でその数を大きく減らしてしまっているはずだ。出来るかは分からないけれど、本当に隕石の少女に力があるのならこんな回りくどいやり方をしなくても強制的に全人類の命を奪えたはずだ。
だとしたら考えられるのは・・・
「隕石が地球に降って来たのは偶発的に起きた事故だったとか?」
「鋭いね、私もそう思っていたの」
思わぬところで四条さんと考えが合ってしまった。
「もしそうだとしたら隕石に悪意・・・いや、敵意はなかった?」
「正解。100点」
ビシっ!っという擬音がつきそうな勢いで四条さんは僕に指をさす。・・・嬉しい。
「でも仮に事故だとしても、ぶつかった相手からさらに命まで奪うなんてやっぱりどうかしてる」
「そうだよね、そこなんだよね。その理由なんだよね…」
四条さんと僕は腕を組みその答えを一緒に考える?
「もしかして…、人類とは価値観が違うとか?」
「・・・どういう事?」
「隕石の少女にはたぶん悪気がないんだ。だって人格があるってことは異星人でしょ?だったら価値観や価値基準が違うんだ。だから僕ら地球人の判断基準で考えること自体が間違いかもしれない」
「・・・面白い推理だねぇ」
四条さんの瞳がキラキラと輝く。
あぁ、僕は四条さんのこういう理知的で好奇心旺盛なところを好きになったのかもしれない。いやそもそも僕は愛には理由なんていらないと考えている!その考えを曲げるわけにはいかない。
・・・でも・・・・・・・・・可愛いなぁ。
もし機会があったら四条さんが好きな小説を聞いてみよう。推理小説だろうか?それともSF系だろうか?
思えば僕は四条さんの事を何も知らない。
そもそも何も知らない相手の事をどうして好きになったんだっけ?
まあいいか、僕は愛には理由がいらないと思っている硬派なティーンエイジャーだ。
「それで推理の続きは?」
話の続きを待つ四条さん。
しかし僕はこれ以上の推測が出来ていない。
「ごめんこれ以上はさすがに分からないや」
「・・・ざんねん」
「相手は異星人だしね。それこそ僕なんかの尺度じゃ想像もつかない」
そう言って僕は窓の外を眺める。外の景色と言えば例の赤い霧に街は覆われ、さらには火山噴火の影響だろうかまるで雪のように空から灰が降り注ぐ。
残念ながら現実感の無い景色は現実を逃避させてくれない。
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【Tips】
四条みゆき
僕、波多野六郎太の幼馴染にして同級生にしてミステリアスな文学少女!そして僕はそんな彼女に絶賛片思い中!
世界がたとえ終わるとしてもこの一瞬を彼女と共にできるのなら・・・僕は死んでもいい!
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