第4話気がつけば、そこは暗い部屋…ではなかった。





ひやりと冷たい夜気が肌を刺す。

背中にはごつごつとした硬い木の感触。手首に食い込む縄の痛み。


あの女の人と、目が合った。それが最後の記憶だった。

驚きと恐怖で見開かれた彼女の瞳。その奥に、一瞬、人間ではない何かの光が宿ったように見えたのを最後に、私の意識はぷつりと途絶えたのだ。


ゆっくりと瞼をあげる。

ぼんやりとした視界に映ったのは、天井ではなく、満月が浮かぶ不気味な夜空と、枯れ木の黒いシルエットだった。


何が起きたの?

混乱する頭で自分の体を見下ろし、私は息をのんだ。


私は、巨大な円形の的に、磔にされていた。

着ていたはずの制服はところどころ引き裂かれ、ストッキングは破れ、肌には見覚えのない呪文のような黒い文字がびっしりと書き込まれている。


「いや…っ、いやぁっ!」


恐怖で声にならない悲鳴が漏れる。必死にもがくが、縄はびくともしない。


その時。

闇の奥で、カサリと枯れ葉を踏む音がした。


ヒュッ、と鋭く風を切る音。

直後、私の顔のすぐ横に、ドンッという鈍い衝撃が走った。

的が揺れる。震える視線をそちらに向けると、一本の矢が、私の髪をかすめて深く突き刺さっていた。


「…見つけた」


闇の中から、静かで冷たい声がした。

聞き覚えのある声。


月光の下にゆっくりと姿を現したのは、さっきまでデパートのベッドで気持ちよさそうに眠っていたはずの、あの女だった。

その手には、弓が握られている。


「あなたは…一体…」


「ルールを破ったから」


女は感情のない瞳で私を見つめ、静かに次の矢をつがえた。


「私の王国を、覗いた罰」

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