午前二時

 スマホの着信音で目が覚めた。壁掛け時計に目をやる。午前二時だ。

「まただ……」

 瞬時に後悔が胸をしめつける。寝る前にスマホの電源を切り忘れていたのだ。

 着信音は執拗に鳴り続けている。おそるおそるスマホを手に取ると、「非通知設定」の文字が冷たく光っている。震える手で電源ボタンを長押しして、ようやく音を止めた。

 その瞬間、壁掛け時計がカタカタと音を立て始めた。

「もう、やめて!」

 次いでカーテンが揺れ出し、さらにベッドが置かれたほうの壁からドンドンドンドンと鈍い音が響いてくる。そして最後はいつものように、浴室からくぐもった女の声が這うように聞こえてきた。


「ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない……」


 憎悪に満ちたおぞましい声に、気が狂いそうになる。

 奈央は耳を塞ぎ、声の限りに叫んだ。

「もう、いい加減にして! そもそも、あんたが悪いんでしょ! 逆恨みはやめて!」


       *  *  *


 翌朝、目を覚ました奈央はベッドの上で大きく息を吐いた。恐怖の余韻はまだ身体にまとわりついていた。

 奈央は意を決してスマホを手に取った。

「もしもし、真由美? 朝早くからごめん。やっぱり、昨日ファミレスで紹介してもらった人に会ってみようと思う」

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