絶望への落下

沙理奈と暫く話して俺は渚病院を出て最寄り駅に向かって歩いていた。ほんの少しではあったけど沙理奈と話せて良かったと思った。それに断ってしまったが沙理奈の気持ちを聞くことが出来て嬉しかった。冷志がフランスに来なければ俺は二度と沙理奈と会うことはなかった。余命が終わるまでずっとフランスにいたと思う。沙理奈の気持ちを知ることなく永遠にお別れしていただろう。だから冷志がフランスに来てくれて本当に良かったと思っている。俺は感謝のメールを冷志に送った。

 伊「修行が終わるまで帰らないって意地を張っていたけど日本に帰って来て、沙理奈と再会して本当に良かった。ありがとう冷志。俺を日本に連れ戻してくれて」

交差点に差し掛かると人混みが出来ていて、救急車が止まっていた。どうやら交通事故があったらしい。すぐに救急車はその場を走り去ってしまった。最寄り駅に到着し、電車を待っていたが冷志から返信が来ない。いつもはすぐに返して来るので珍しいと思った。きっと気づいていないのだろう。今日はホテルに止まって、一度実家に顔を出してからフランスに帰ろうと思っている。家族に会うのは久しぶりなのでとても楽しみだ。すると携帯にニュース速報が届いた。渚病院の交差点で交通事故が発生というものだった。俺がさっき見たやつだろう。内容が気になり俺はその記事を開いた。内容を読んで俺は電車の床に携帯を落とした…………………………

 りんたろうが帰った後私は一人でさっきのことを思い出していた。人に想いを伝えることがこんなに恥ずかしいことだとは思わなかった。思い出しただけで顔が熱くなって、鼓動が早くなった。冷志は私に対して二度もこんなことをしていたのかと思うと凄いなと思った。冷志がフランスにわざわざ行ってくれなかったら私はりんたろうに想いを伝えることなく余命を全うしていただろう。冷志の行動力のおかげで最後にやりたいことが叶えられた。私は冷志にお礼のメールを送った。

 森「冷志、りんたろうと会わせてくれてありがとう。冷志のおかげで想いを全部吐き出すことが出来ました。本当にありがとう」

結果は振られて残念だったが、想いは伝わった。けど、やっぱり悲しい気持ちもある。私は冷志に同じ気持ちを味会わせてしまったのかと思うと少し申し訳ない気持ちになった。今度会ったらしっかりお礼とお詫びをしようと思う。それにしてもいつも返信が早いのに今日は返信が遅い。まだ二人でいると思って気を使っているのかもしれない。人前で泣くのも初めてだった。グシャグシャの顔をりんたろうに見られたと思うと凄く恥ずかしかった。私は恥ずかしさを紛らわせるためテレビをつけた。テレビではニュース速報が放送されていた。どうやら近くで事故があったらしい。ニュースの内容を見た私はテレビのリモコンを床に落とした……………


 本日の夕方、渚病院近くの交差点で縦山冷志さんが車に跳ねられ死亡しました

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