後ろ髪を引かれないように

沖縄に向かう前にやっておきたいことはやっておこうと思った。ずっと行きたかった動物園に行った。パンダやライオンなど生き物好きにはたまらない動物ばっかりだ。写真を撮って沙理奈に送った。沙理奈も生き物が好きだから可愛いと食いついてくれた。

 冷「やっと行きたかった動物園に行けた」

 森「お!可愛い写真がいっぱいだね」

 冷「人がいっぱいで大変だった。でも楽しかった」

 森「誰と行ったの?」

 冷「えっと…一人です…」

 森「誰か誘えば良かったのに。まぁ、私も一人で出掛けること多いから」

本当を言うと沙理奈のことを誘いたかった。仲直りのついでに昔の約束を果たしたかったが、また沙理奈に不快な思いをさせたくないと思い誘えなかった。

 冷「ちなみにあと少しで沖縄に出発します」

 森「あらら、結局高校卒業してから会ってなかったかもね…会ったっけ?」

 冷「会ってないね。一度は会いたかったな」

沙理奈からそんな言葉が出るとは思わなかったので正直驚いた。

 森「また戻ってくるでしょ?」

 冷「そうだね。沙理奈も遊びに来なよ。楽しいよ、きっと」

 森「行けたら行きたいな~」

仲直りしなければこんなメールの会話をすることも二度となかったと思う。仲直りをして本当に良かったと思う。これからもこうして何気ないやり取りをしていきたいと心からそう思った。

りんたろうと二人でご飯に出掛けた。沖縄に行ってしまう前に行こうとりんたろうに誘われた。フランスに留学すると言っていたが詳しいことは聞いていなかったのでこの機会に聞いてみた。

 冷「専門学校卒業した後はどうするの?」

 伊「とりあえずバイトして留学の資金を貯めるよ。溜まり次第フランスに留学に行ってくる。一人前になるまでは戻ってこないつもり」

 冷「じゃあ、出発には立ち会えないかも知れないな」

 伊「出発の日時が決まったらメールするよ」

 冷「宜しく」

大切な親友の旅立ちを見送れないのは嫌だと思った。りんたろうが出発するときは絶対帰ってこようと決心した。

 伊「それよりこの前沙理奈に英語の勉強を頼まれたんだ。料理も作らされてめんどくさかった」

 冷「そうなの?りんたろうは英語が得意だから頼られるのは仕方ないよ」

口ではこう言ったが、心のなかでは嫉妬した。俺は高校卒業以来会っていないのに何でりんたろうは会えているんだと思った。だが、沙理奈が海外に行くための勉強だから仕方ないと心の中で自分を落ち着かせた。

 伊「沙理奈から聞いたんだけどちょくちょくメールのやり取りをしてるらしいじゃん?」

 冷「ちょくちょくね」

 伊「まだ好きなの?」

その一言で俺は自覚すると同時に目覚めた。俺はまた沙理奈の事が好きになっていると。今まで気づかなかったが沙理奈とメールをやり取りして楽しいのも、りんたろうに嫉妬したのも、また沙理奈への気持ちが芽生えた証拠だった。

 冷「そうだね」

俺は小さな声でそう呟いた。りんたろうはそれ以上言及してこなかった。ご飯を食べ終わった俺たちはそのまま解散した。

 空港に到着してから沙理奈にメールした。出発の報告をするのとまたメール出来る関係に戻れた嬉しさを伝えるために。

 冷「沖縄に出発します。仲直りが出来て本当に良かった。帰ってきた時にはご飯でもいこうね。行ってきます」

 森「何の仲直り?喧嘩してたっけ?行ってらっしゃい」

沖縄に向かうという時も沙理奈はいつも通りの感じだった。やり取りをしなくなった理由を忘れていたのはショックだったが沙理奈らしいと安心した。

 冷「元気でね!」

こうして俺は沙理奈への気持ちを伝えることなく沖縄へと出発した。

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