わかってないしわかってくれない

高校を卒業してから冷志とりんたろうは専門学校へ入学したが私は就職を選んだ。海外へ語学勉強に行くためのお金を稼ぐためだ。食品工場に就職し、冷凍食品やインスタント食品の袋詰めを毎日やっている。忙しくはあったが将来海外へ行く未来に進んでいると思うと頑張ることができた。たまに冷志からメールが届いたりもした。専門学校の行事や研修の様子などとても楽しそうなのがメールの文脈からも伝わってきた。そんな冷志とメールのやり取りをするのがほんの少し楽しかった。将来夢を叶えて一緒にお出掛けすることを少しだけ期待している私がいた。自分の夢と冷志の夢、二つの未来に私は希望を見ていた。でも、そんな希望はすぐになくなって私は冷志が大嫌いになった……………

 上司「違うよ、沙理奈さん。もっと丁寧に袋詰めしないと商品にならないよ」

 森「はい、気を付けます」

 上司「遅いよ、沙理奈さん。もっと早くやらないと納品日に間に合わないよ」

 森「すいません」

毎日のように上司に叱られた。精神が弱い方ではないが毎日毎日叱られればどんなに精神が強い人でもボロボロになるだろう。おまけに冷凍食品を扱っているせいで手があかぎれで痛くて仕方がない。正直社会をなめていた自分がいた。朝から晩まで工場で立ったまま、上司に説教され家に帰ったら死んだように寝る。そんな毎日が続いていた。そんな時でもお構いなしに冷志はメールを送ってきた。どうでもいい事を嬉しそうに。一応返信はしていたが本当のことを言うとうっとうしかった。そっとしておいて欲しかった。この頃から私は冷志に不信感を抱いていた。

 就職してから4ヵ月ほどたった夏、冷志からデートのお誘いがきた。私は考える時間が欲しいと冷志に言った。息抜きにはいいかもしれないが、出掛けるのも億劫だった。何より冷志への不信感が拭えなかった。私が苦しんでいる時も楽しそうなメールは送って来て、学生生活を謳歌している感じが許せなかった。なかなか答えが出せず返信出来ないでいる間も冷志はメールを送ってきた。心配しているようなことを言っていたが結局自分のことしか考えていないことが分かった。私の堪忍袋の緒がとうとう切れた。私は冷志からの誘いを断った。それからは冷志のメールを開かないことにした。こいつは私の事なんか見ていない。自分が満足なら、自分が良ければそれでいいような奴なんだ。私の中の冷志への期待は微塵もなくなっていた。

 冷志とのやり取りをしなくなって暫くたったある日りんたろうからメールが届いた。

 伊「冷志から伝言を預かっているんだけど伝えてもいいかな?」

どうやら冷志はりんたろうに伝言を頼むという姑息な手段に出たらしい。聞くのもうんざりだが一応聞いてみることにした。

 森「なに?」

 伊「夢を叶えるまで待っててね、大好きだよ。だってさ」

私は呆れてしまった。これだけ無視されて、メールの返信もされていないのにまだ私が待っていると思っているのかと。怒りが込み上げるなかりんたろうに伝言を頼んだ。

 森「冷志に伝言を伝えといて。めんどくさい。後この先恋愛対象にはならない。仕事の事で手一杯なのにしつこくメールされてうざい。そう伝えといて」

この時私は冷志との繋がりを断ち切った。後悔なんてしていない。悪いのは全部あいつなんだから。

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