彼女に、祝福をお与えください

季節は流れ、夏休みになった。

フランス語の授業が終わった。期末試験も終わり、しばらく大学には行かなくなる。

彼女と会えなくなる。

彼女の声が聴けなくなる。

不思議とさみしくはなかった。


彼女は旅行するようだ。私はバイトに明け暮れる。


てっきりひとりで行くものだと思っていたが、風の噂で聞いた。

彼女は、男の子とふたりで、紺碧の地中海に行くと、友人が教えてくれた。

そしてその相手は、彼女が長年恋い焦がれていた相手で、やっと交際できたのだと。


私は、祈っていた。

私を変えてくれた彼女の、新しい人生。

それが祝福と愛に満ちているものであるように。


私は彼女のことが好きだが、それを誰にも言うつもりはない。

彼女の人生は、彼女のものだ。

どうか幸せになってほしい。

彼女には、その資格があるのだから。


私達は神様に愛されて生まれてきたのだから、孤独に生きたひとでも、ひとを嫌うようなひとでも、もう愛を知っているのだ。

私も、彼女も、そして世界中の誰もが、幸せになる権利がある。

幸せは権利であり、それは誰もにも与えられたものだ。


神様、彼女を祝福してください。

優しい笑顔が、いつまでも曇らないように。

いいや、曇ったとしてもすぐに愛を思い出せるように。

透き通る声が、いつまでも素敵な音色を奏でてくれるように。

いいや、泣いたとしてもまた希望を持てるように。


彼女が幸せであることを、私は遠くから願っている。

人生に唯一絶対の正解はない。

私達は間違える。失敗する。後悔する。

涙で前が見えなくなり、枕を濡らし、眠れないまま朝を迎える。


私が彼女に思いを伝えなかったこと。

私が家族にカミングアウトしなかったこと。

彼女が彼を選んだこと。

彼が彼女を選んだこと。

同性愛者でありながら、教会に通い続けること。

私が、彼女のことを、好きなこと。

私が、彼女を、遠くから見守ること。


それのひとつひとつが、私達にとっての正解になりますように。

正解は、誰かから与えられるものではない。

自分で選び取り、それを正解にすることだ。


私は、後悔すると思う。失敗したなと思うかもしれない。

それでも、神様は、私のもとを離れたりしない。

私も、彼女のことが好きな自分を、ようやく好きになれているのだ。

神様は、私と彼女に「女」という性別を与えた。

それにどんな意味をつけようが、どんな人生を歩もうが、私は、彼女は、神様の祝福を受けている。

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