神様、ゆるしていただけないでしょうか

なぜ、私は自分が「女の子のことを好き」だと素直に認められないのだろうか。

気持ち悪い、と思ってしまう。

同性愛者のことも、それを恥ずかしいとも思わず公言するひとも、そしてもちろん「同性愛者なんて気持ち悪い!」と言ってしまうひとたちのことも、こんな自分が好きになれない自分のことも。


この機会に、深く考えてみた。

「気持ち悪い」と思うことは、しょせん誰かの感情のパクリでしかなかった。自分の言葉で、なぜ彼らに否定的な感情を抱くのかが説明できなかった。これは自分の感情ではなかったのだ。誰かから押し付けられた重荷だったのだ。


親が、いわゆるオカマのタレントを見て、「変な髪型」と言ったこと。

祖父が、街なかで男のひとどうしが手を繋いでいるのを見て、すこしだけ歩調を早めたこと。

親戚が、車椅子用トイレに入っていく五体満足のひとを見て、目を背けたこと。

ネットで、同性愛者だと公言したひとが、叩かれていたこと。

テレビで、意図せず切り取られた、過激な発言。

政治家が、同性婚なんか絶対に認めないとマイクを握りしめて語ったこと。


私は、私としてこの世に生まれ育ったのではなく、他者から教育され、調教され、他者の感受性のなかで生きていた。

私の意見は他者のものであり、そしてまた、私も誰かになんらかの影響を与えている。


親がオカマのタレントに厳しい言葉を投げたとき、私は黙っていた。

祖父が歩調を早めたのを見て、私もここから逃げなきゃと思った。

親戚が目を背けたとき、私もまた目を背けた。

ネットで叩かれていたひとをみて、彼らも悪いんだなあと思ってしまった。

テレビで切り取られた発言を、そのまま鵜呑みにしてしまった。

政治家の発言を聞いて、世間の意見はこうなんだと思ってしまった。


神様、ゆるしていただけないでしょうか。

いままでの、差別的な私のことを。

なぜ気持ち悪いと思ってしまったのでしょうか。

他者の目を気にしてしまったのでしょうか。


神様、私を見守ってください。

私はこれから私の意見を最優先に生きていきます。

その過程で、他者に迷惑や心配をかけることもあるかもしれません。

それでも、あなたのその手で、倒れた私を再び起こしてください。


神様、いままでの私は、他者の目を気にして生きていました。

あの子に恋したことで、私は変われました。

どうか、このまま背筋を正して生きていくことができる強さを、私にお与えください。


神様、祝福をお与えください。

同性愛者であることをまだ認められない私に。

私には勇気がないのです。新しい人生を歩む勇気が。

同性愛者にきつい言葉をかけるひとに。

彼らには悪意がないのでしょう。ただ同性愛者のことをあまり知らないだけでしょう。

私の家族に。

私は、家族にはこのことを言わないでしょう。まだいまの私には、言う必要がないからです。

それでも、私がどんな姿でも、家族は私を愛してくれるでしょう。

私も、たとえ家族の同性愛者に対する意向がどうであれ、家族のことが好きなのです。

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