私は、私を選択する
私の頭の中から彼女の存在を消すことは、もはや不可能だった。だったらいっそ、自分の気持ちに正直になろうと私は決めた。
授業のたびに、私達はフランス語でつたない会話をする。
彼女はこの国の西の方に住んでいて、しゃぶしゃぶが好きで、青色が好きで、お父さんはフランス人で、よくフランスを旅行して、大学4年生で、卒業論文を必死に書いていて、経済学部に入っていて、英語もよくできて、第二外国語としては中国語をやっていたが挫折しそうになって、お酒はあまり飲まなくて、たばこを吸わなくて、ギターが好きで、ピアノが弾けて、カラオケが好きだといったこと。
授業では会話をする機会が多くあり、彼女と私は常に同じ班だったので、彼女のことを私はよく知れた。
私も似たようなことを話した。
私はこの国の南の方に住んでいて、すき焼きが好きで、ピンクが好きで、両親もこの国の人で、よく構内の温泉を訪れ、大学2年生で、卒業論文は書く予定がなく、文学部に入っていて、英語は好きだけれどあまり得意ではなく、第二外国語はこの授業が最初なので他の言語をあまり知らなくて、それでも中国語もやってみたくて、ギターもピアノも弾けないけれどバイオリンに憧れがあって、カラオケが好きだという話をした。
「ねえ、今度カラオケに行かない?」
彼女からそう誘われたときには、心臓がうるさく跳ねた。
ああ、彼女が好きなんだな。
その優しそうな笑顔、絹のように綺麗なストレートの黒髪(ソメているわけではなく、母譲りだそうだ)、こころもきっとそうなのだろうと思わせるような透き通る声、外国のひとみたいなクセがあるけれど読みやすく綺麗な筆跡。
そのすべてが好きだった。
好きなんて言葉は、いくら使っても、なくなることがなかった。
私は、彼女が好きな私が好きだ。
そう思わせてくれる彼女が、たまらなく好きだった。
もう嘘はつけない。
自分の気持ちに素直でいないことは、私にはできなかった。
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