第2話

 外では雨が降っている。

 二時間目はあんなに日差しが暑かったのに。

 今日も、何事もない一日だった。

 体育はときどき目眩がした気がしたけれど、倒れることはなかった。

 学活終了後、部活に向かう柚杏に「家帰ったら、一回寝な」と言われてしまったので、三十分ほど仮眠をとろうかと思う。

 「やーべ、傘忘れた」

 下駄箱から靴を取り出したところで、後ろを向くと、朝の陽キャがいた。

 水曜日以外は、全部活 活動のはず。バスケ部は練習がないのだろうか。

 それにしては、周りの奴らがいない。

 「傘、使う?普通のと折り畳みあるから。折り畳みでいい?」

 傘を忘れたときのために、鞄に折り畳みは常備している。

 「え、まーじ。来栖くるす、いいの?」

 名前を呼ばれて、鞄の中を探す手が一瞬止まった。

 彼に片思いしてときめいたとか、全くそんなことはない。

 ただ、今日はじめて誰かに名前を呼ばれた気がする。

 「はい。宮瀬みやせ、今日バスケ部ないの?」

 「まじありがと。今日ね、歯医者」

 「そっか」

 金曜日の放課後の昇降口は、人が少ない。

 それも下校時刻を過ぎると、私たちの他に数人しかいない。

 「朝はごめん」

 「ん?あー、いや割り込んでごめん」

 「来栖は謝る理由ないから。邪魔だった俺らが悪い。てか早く来たなら勉強しないとだよなー」

 ほんと、よくしゃべる人だ。

 「傘は明日返す。袋なくさんようにしないと」

 「じゃ」手を上げられ、どう返せばいいか分からず、とりあえず真似をしてみた。

 少し首をかしげながら手を上げる私を見て、宮瀬が笑いながら去っていった。

 袋はなくされたら困るなーと思いながら、傘を開く。

 傘に当たる雨の音を聞いて、ふと思い出したが、明日は土曜日。

 傘が返ってくるのは月曜日になりそうだが、別に問題はない。

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