世界樹、枝で救えるものの限界を探しながら自由奔放に生きる。

御水パレヱド

【神樹誕生】目が覚めたら……?

プロローグ:過労死

 異世界に行きたい。



 そう思えるほど、子供の頃はファンタジーが大好きだった。

 魔物や魔法――現実には存在しないものにワクワクしてた。


 ある作品は、剣と魔法を主軸とした話だったり。

 ある作品は、世界の真実を解き明かす話だったり。

 ある作品は、底辺から頂点まで成り上がる話だったり。

 ある作品は、自分を陥れた奴らに復讐する話だったり。

 ある作品は、強大な力を手に入れても平穏に暮らそうとする話だったり。


 どんなストーリーでも、俺はファンタジーが大好きだった。


 画面の向こうの勇者たちはいつだって世界に平和をもたらしてたし、壁として立ちはだかる強敵たちも、それぞれ魅力的なキャラクターとして描かれていた。


 中学生くらいになったら、自分で設定を練ったり小説を書いたりもした。

 俺もいつか、その物語セカイの中で生きていたいと思っていた。




 けれど、大人になった俺がいたのは、憧れた物語やその情熱とは全く正反対でかけ離れた場所だった。




(……俺、この人生で楽しかったのかな)


 ここ数年の疑問が湧いてくる。

 子供の頃は希望に満ち溢れていたのに、今では無心で仕事に取り組む日々だ。

 好きだった創作もできるどころか、生きるための貯金すら無い。


(……力が出てこねぇな……)


 ガタン! と力なく床に倒れ伏す。


 ……あ、これ死ぬやつか……。声も出ない。

 死因は多分、水が摂れないことによる枯渇こかつか……。


 入社してから明るい感情なんてなかったし、上司への怒りと不満だけが蓄積する日々だったな。


 もっとラノベとかアニメを見たかった……。

 ――いや!! 最後だけでも、明るい感情でいこう!


 異世界に行けるならどうしたいか。

 それは――やっぱりまったり暮らすのもいい。

 けど、俺は戦ってみたいんだ。愛せる者も欲しい。強欲でも、俺はその人のために戦いたい。


(神様、仏様! 俺はこの世界に悔いはありますが、俺はこの世界で人生をやり直したいとは思いません。ですが、もし! もしも、来世があるのなら……次こそは、普通の人生を歩み――――)


 そう願った瞬間、光も闇もなくなり、浮遊感だけが残った――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る