【7】
最近の携帯電話、もといスマートフォンは便利になった。
電話番号を登録すると、とあるSNSのアカウントまで繋がるシステムになっているのだ。
RAIN――――気楽に連絡が取り合えるそのアカウントを、オレは公私共に、好んで使っている。
というか、若者達の間では主流のようだし、オレの周りの人間も、大事な用事ではない限り、このSNSアプリを使用し連絡を取り合っている。
ただのメールなんて、もう時代遅れだと言わんばかりに。
いやはや、『メアド交換しようぜ〜』なんて言っていた時代が懐かしいものだ。
そんな訳で、オレが喜田くんに電話番号を教えたことにより、彼は当然のように、RAINアプリにてオレのアカウントを見つけ出したようで……。
『放課後……学校から離れた場所で待ち合わせしよう』
といったメッセージが届いたのであった。
オレは二つ返事で返信する。
『了解。遠野池駅(薄池高校の最寄り駅から四つほど離れた駅)近くの公園に、18時で良いか?』
『了解』
以上のようなやり取りを経て。
転校初日を終えた放課後、オレと喜田くんは、遠野池駅近くの公園にて集まった。
その東屋にて向かい合って座り、会話を交わす。
「昼休みの時、聞き損ねたけど……君は一体何者なの?」
「それを答える前に、あの時は気を利かしてくれてありがとう。話を逸らしてくれてなかったら、あの瞬間、終わっていたかもしれない」
「それはどうも……で? 君の正体は? まさか本当に、オカルトマニアだって言うんじゃなかろうに」
「もちろんだ。学校案内の際にも言ったが、オレはホラーが苦手だ。子供向けのお化け屋敷に入っただけで、一週間は一人でトイレにも行けないレベルのビビりだ」
「それはそれは……大層な嘘を言い放ったものだ」
「オレの本当の正体は――――【幻想現象対策部隊】その隊長をしている」
「は……?」
喜田くんの目が点になる。
当然の反応だ。
何せ、【幻想現象対策部隊】は、非公式の組織なのだから。
非公式であり、影。
誰も知らないところから、こっそりと、この国の平和を守っている組織なのだから。
表の世界では、まことしやかに都市伝説で語られている程度の知名度である。
「え……え……? いや……都市伝説では聞いたことはあるけれど……え? 本当に……? 本当に、【それ】って存在するの……?」
どうやら喜田くんは、【幻想現象対策部隊】を、都市伝説として耳にしたことがある人だったようだ。
本当にこの子は話が早い。
「ああ、存在する。薄池高校に奇妙な校則があるように、【幻想現象対策部隊】も、存在する」
「……と、いうことは?」
「そういうことだ。この薄池高校の現状には……その都市伝説でも馴染み深い――――【幻想プラシーボ】が関係している」
「…………!!」
息を飲み、カッと目を見開いた喜田くん。
その瞳には今、どんな感情が湧き上がっているのだろうか?
恐怖か? はたまた絶望か? それとも非現実感だろうか?
どれでもいい……どうせ、マイナス的感情であることには違いない。
「す……」呟くようにそう放った口から、こんな言葉が続いた。
「すっげぇぇええええぇええーーっ!! マジ? マジマジ!? マジであの、【幻想現象対策部隊】なんすか!? やっべぇー!! 激ヤバ!!」
目をキラキラさせていた。
予想外の大ポジティブ感情だった。
「しかも隊長だなんて!! 重要人物中の重要人物じゃないですか!! すっげぇー! 只者ではないとは思ってましたけど! ガチのヤバい人とは!! くぅ〜都市伝説マニアとして血が騒ぐぅ〜!!」
まさかの、都市伝説マニアでもあったそうだ。
「はっ!」
おっと……何かに気が付いたようだ。
「でもでもでも! そんなことボクに教えちゃって大丈夫なんですか!? これって! 超極秘情報なんじゃないんですか!?」
顔をめっちゃ近付けてきて心配してくれた。
その気持ちはありがたいけど、圧が凄いのよ。圧が。
「……心配はいらない。確かに、極秘情報中の極秘情報ではあるけれど……今の君みたいに、知っている人間が一人、二人と、ポツンポツンと増えることで、都市伝説として残り続けていくんだよ。巷に流れる事実不明確な情報でも、【幻想プラシーボ】に対してのある程度の牽制になるんだ。だから、任務先で出会った協力者には、オレはできる限り、包み隠さず話すことにしている。まぁ、完全に隠し切る奴もいるがな」
「へぇー! そうなんですね! でもでも! ボクのオカルトマニアっぷりを舐めない方が良いですよ? あっという間に拡散しちゃうかも!」
「その場合は、オレが、話す相手を間違えたことをしっかりと認めた上で、強行手段に出るだけだ。生憎、オレの顔は広くてなぁ。人一人くらいなら、海に沈めるのなんて造作も……」
「う、ううううううウソです! 拡散したりしません! だから許してください!!」
「……分かれば良い」
当然嘘だ。
まぁ、そういう手がないこともないのだが……。
もし喜田くんが、そのような蛮行に出たとしたら、もっと穏便な解決方法をしてみせよう。
何せオレには、頼れる相棒がいるのだから。
「……で、この話を聞いてもらった以上、喜田博利くん、君には、オレたちの仕事を手伝ってもらいたい訳だ」
「……仕事を? あの伝説の【幻想現象対策部隊】の……仕事を? ボクなんかが?」
「ああ――――君に、手伝ってもらいたいんだ」
続ける。
「当然、これはビジネスだ。問題を解決したあかつきには、相応の報酬を支払おう」
「報酬……?」
「お金でも、物でもいい。相応の危険がある仕事だ。報酬はそれなりに用意しよう……どうだ? 君としても、そのまま坊主頭で、花の高校生活を終えるのは不本意だろう?」
「……確かに……」
喜田くんは、少し考える。
顎に手を当てるという、あからさまな思考ポーズを取りながら、考えている、
先程も述べたが、危険の伴う仕事だ。
別に断ってもらっても構わない。
オレ一人で解決できない問題でもないと思う。
けれど、相手が【幻想プラシーボ】である以上、こちらも頭数は揃えておくことが望ましい。
『幻想の否定』は――――否定する人間が多ければ多いほど良いのだから。
ただしそれはあくまで、彼が望めば――の話だ。
「強要はしない。君が君のまま、あの奇妙で、奇々怪々で、異常な校則を否定してくれるだけでも、ありがたいんだ。どうかな?」
「やります!」
お。
「是非! ボクにも手伝わせてください! 都市伝説マニアとして! ここで引き下がったら、ボクはボクのサイトユーザーに顔を向けられなくなります!! だから手伝わせてください!!」
どうやら喜田くんは、サイトを立ち上げているようだった。
随分とコアな都市伝説マニアだったようだ。
しかし……何にせよ、これはありがたい申し出である。
「よろしく頼む」
「はい!」
そんな訳で、契約成立。
オレと喜田くんは、握手を交わしたのだった。
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