第5話 ギルドの凄腕 ― 5

 数週間後。

 儂はいつも通りエレノアから朝の報告を受けていた。


「……西の山脈で最近珍しい魔物がたくさん目撃されているらしい、あそこの領主はあんまりギルドに依頼しないけど、もしかしたら討伐クエストが増えるかも」


「うむ」


「……半年前に結成されたパーティー・『オリオリオリ』が全員Bランクに昇格。少人数なのにかなり早いペースで昇ってる」


「なんじゃ『オリオリオリ』って」


「メンバーがオリバー、オリビア、オリヒメの三人だから『オリオリオリ』なんだって」


「最近のパーティー名はふざけてるのが多いのぅ」


「昔からじゃない? 昼か夜に三人の最新のステータスが表示されているプロフィールを持ってくるね」


「うむ」


「後、先月引退したエイブ=オネストくんから手紙が届いているよ」


「おお、読んでくれ」


 エレノアは丁寧に手紙を開き咳払いをした。


『拝啓

 秋の落ち葉も残りわずか、冬の始まりを感じる気温の中、マスターはどうか暖かいまま過ごしている事と願います』


「本当に丁寧な奴じゃのぅ」


 別にエイブは貴族の家庭出身とかじゃないはずじゃぞ?


『先日自分の元パーティーメンバーのお訪ねがありまして、再びマスターの心の温かさを知りました』


「儂何かしたっけ?」


『エリクサー誠にありがとうございます』


「あー」


『仲間から聞いたところ、合成するのはとても難儀なクエストだったそうで、サーシャ様の手助けがなかったら出来ることもなかったらしく、そのサーシャ様もマスターが説得してからこそ手を貸してくれたのだと』


「礼はサーシャにじゃろ」


『勿論、サーシャ様にもお礼の手紙を書かせてもらってます。この一通とともに仲間に預けます』


 エレノアを見上げると、クスクスと笑いながらもう一通の手紙を見せてきた。


『そしてこんなに優しくしてもらったものの、自分のわがままをどうかお許しください……』


「ん?」


 読むのを止めたエレノアの表情は驚きでいっぱいだった。

 もう一度咳払いをしてから、彼女はゆっくりと読み上げた。


『せっかく自分の腕のために作ってくれたエリクサーですが、父親の病気を治すために使わせてもらいました』


 エイブはそういう奴じゃったのぅ。


「お義父さん、全然ビックリしてないのね」


「予想はついたからのぅ」


「てっきり腕が治ったら、エイブをギルドに連れ戻して、後継者に仕上げるのかと思ってた」


「いや? 儂は戻らんと知ってたぞ」


 エレノアは手紙の残りを読んだ。

 後はお礼とお詫びをしつこく繰り返す言葉ばかりじゃった。


『……本当に今までお世話になりました。

 

             エイブ=オネストより


 野良風ワイルド=ウィンドギルドマスター・ジャック=ホール様へ』


 久しぶりに儂の名前を聞いた。

 ギルドメンバーはほぼ全員マスターマスター呼んでくるしのぅ。

 エイブは儂の名前知っていたんじゃな。しっかりしている子じゃ。

 返事は少し時間を開けてから書くことにしよう。


「後継者のぅ……」


「お義父さんも仕事ばかりしてないで、引退を考えたら?」


「ノアじゃったら誰を選ぶ?」


「……やっぱりサーシャさんじゃない?」


「サーシャか……」



・―・―・―・


 エリクサーの素材が集まったら『ホットなドッグズ』はその合成をしてからエイブへ届けに街を出た。

 その際にサーシャがクエストの完了報告をしにきた。

 サーシャの行方不明の恋人・スローンの見た目や特徴等々を教えてもらい、人探しのクエストを書き上げた。

 ついでに、今回一緒に冒険したエライザとブリックの話を聞いた。


「エライライは火属性と光属性が得意って言うけど~? 狭くて深いって感じ~? 例えば~《ファイアーボール》ってあるじゃ~ん? 同じ魔法陣を工夫すると……」


 儂は魔法の話が分からんので、サーシャの説明に適当に頷いた。

 エライザがワンパターンって事は分かった。


「……ブリックんは~ なんか~ 全て受け身って感じ~? タンクだからなのか~ 間違えるのを怖がってるんだよね~ 戦いで主導権をあんま取りたがらないね~」


 かなりしっかりとパーティーメンバーを見ているのに関心じゃ。


「Aランク冒険者として続けられそうかのぅ?」


「二人じゃムリだね~」


「サーシャなら二人をどんなパーティー構成に置く?」


「う~ん? ローグかアーチャーは絶対に必要で~、近接系がもう一人欲しいね~ 戦士とか聖騎士とか~? 武道家もありかな~? なんか~ Bランクのソロでそんな人いないの~?」


 シーフかアーチャー、つまり周りに目が効く偵察役。

 儂は引き出しを開けて見る。

 なんと優秀なエレノアはメンバーの役割によって違う色のラベルをプロフィールに張ってくれているのじゃ。

 儂の義娘最高。

 偵察役は確か緑色……


「なにより~ リーダーが必要だね~ あの二人が強くても仕切り役がいないと崩れるよ~」


 ここだけ聞くと、サーシャがしっかりとギルドを見ているのが分かる。

 でものぅ……


「二人は付き合っているらしいのぅ……」


 儂はボソッと言ってみた。


「えっ!? 誰が誰が誰が?」


 サーシャはまるで別人の様に食いついてきた。

 いつものゆったりした口調はどこに行ったのじゃ。


「エライザとブリックじゃよ」


「えっ!? えええっ?!? えーーーーーーーっっっ!?!?! だって全然そんなえっ? あたしてっきり、ねぇ!? だって、エーブは!?」


「エイブがパーティーに入る前からの事らしいぞ」


「嘘でしょ!? 嘘じゃん! もう、マスターってそんな…… えっ? マジ? なにそれ大ビッグニュースじゃないの? 皆に伝えなきゃ!」


「皆知っとるぞ」


「えっ」


 別にカップル成立の発表があったわけでもないんじゃろうが、見ていたら分かる二人じゃ。

 儂はあんまり会う機会がないからエレノアに教えてもらったんじゃが。


 なんでサーシャはこう、人をしっかり見ていそうで見落とす点が多いのじゃろうか。


「でもそうじゃな、二人じゃ厳しいじゃろ。ソロのBランクなら何人かいるぞ? サーシャならこの中から誰を入れる?」


「え? なんの話?」


「『ホットなドッグズ』のパーティー構成じゃよ」


「ダメよそんな! マスター! 二人の恋に割り込む事になるじゃない!」


「でもサーシャが言ったのじゃぞ? 二人だけじゃAランク冒険者を続けるのはムリじゃって」


「ぐぬぬぬぬ」


 なぜ恋の話が入るとこうなるんじゃ、お前は。


「わかったわ! 降格でしょ! 二人のランクを下げるの!」


「いやいや、二人は実力も経験もあるしランクを下げたら二人の評判が下がるじゃろう。もっと穏便な方法がないものかのぅ?」


「ならさならさ、あたしが二人のクエストに全部ついて行って陰から二人を見守ればいいんじゃない? これでしょ!」


 バカめ。

 サーシャなら本当にやりそうじゃ。


「任せて~ マスタ~ あたしが二人を育てるよ~」


「ここで元の口調に戻るな!」


 この様じゃなにも任せられん。


★☆★☆★☆★☆★


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老いたギルドマスターの後継ぎ:候補者にもっとましな奴はいないのか? ~Sランクの問題児に振り回されるのがオチじゃろ~ @HakariSchemes

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