第4話 ギルドの凄腕 ― 4

サーシャ=イーズ 視点


 夜空を見上げながらあたしはあの人の事を思う。

 今、どこで何をしているのか。

 あの人も同じ夜空を見え上げているのか。

 そして、同じ様にあたしの事を思っているのか。


 昔、あの人が夜空を指して星座の位置と名前を教えてくれた。

 今はサッパリ覚えていない。

 でも、なんか、星座の中で運命に引き離された恋人二人の星座があるって話だけは覚えている。

 バチボコにエモかった……

 どれだったっけ……?


 そんな夜空を見上げていると、エライライとブリックんがあたしを眺めている事に気付く。

 キャンプの焚火の反対側で二人並んでいる。

 二人は今、腕を失くした仲間・エ~ブのために頑張っている。

 このパーティーの事は前から知っていたけど、一緒にクエストをやるのは始めただ。

 そう、前から知っていた。

 ギルドの一階の酒場で何度も三人で座ってるところを見かけた。

 その時からずっと思っていた。


 ぜ~~~ったいに三角関係だ。


 多分だけど、この小柄で可愛いエライライがエ~ブが好きで、この奥手で不器用そうなブリックんがエライライが好きなんだ。

 ブリックんみたいに体が大きい細目は大体いい奴なんだ。

 そして、腕を失ったエ~ブはもう冒険者を引退した。


 分からないの? ブリックん! 今がチャンスなんだよ!?


 でもブリックんはいい奴だから、恋敵でも怪我を治そうとするんだ。

 きっともし立場が逆転して怪我をしたのがブリックんだったら、エ~ブも同じ事をすると思うとこのパーティーがもうマジ尊いムリ。

 そしてブリックんの気持ちを気付いていないエライライは罪が深い。


「エライラ~イ?」


「は、はい!」


「周りはちゃ~んと見るんだよ?」


「はい! 魔物がいないかの確認ですね!」


 そうじゃないよ、エライライ。

 でもこの三人は今はこのままでいいのかもしれない。


 エライライが戻ってきたら、今回の作戦を確認する事にした。


「それで~? サラマンダ~どうする~?」


 あたしはその場のノリで倒せるけど、今回は二人のクエストの手伝いだし、あたしのペースであれこれ決めるのもよくないよね。


「えっ、あの、どうするとは?」


「う~ん? 作戦とかないの~?」


「作戦はいつもエイブが立ててたから……」


 ブリックんがそう言うとエライライが強がる表情をした。かわいい。


「ダメだよブリック! 今はエイブに頼れないんだよ? 私たちで作戦を立てないと!」


「そ、そうだね。じゃあ、サラマンダーが出たら僕が引き付けるから、二人がその間攻撃して、、、とか?」


「任せて! 私の炎でサラマンダーなんて焦げ焦げよ!」


「ンフフッ サラマンダ~に~ 火は効かないよ~?」


 ついついエライライの可愛さに笑ってしまった。


「それに~ 焦げ焦げだと血を採取できなくな~い?」


「た、たしかに……」


「じゃあどうする~?」


「えっ、私、火が効かないなら出来ることないかも…… 怪我したらヒールするぐらい……?」


「な、なら僕が頑張るよ!」


 これじゃギルドマスターが心配して無理もないね。


「サラマンダ~は~ 火に惹かれるんだ~」


 あたしは焚火をいじりながら助言する。


「もしエライライが魔法で火の玉を操れたら~、それを追っかけると思うよ~? そこをブリックんが叩けばいいんじゃな~い?」


「できるわ、それで行こう!」


「そろそろ来るよ~」


「へ?」


 焚火に惹かれて、近くの岩陰から一体のサラマンダーが出てきた。

 大きさと体形はワニみたい。紺色で全体的にヌメヌメしてる。キモイ。

 口は開けたままで、口の中は気味悪いオレンジ色だった。

 ホァーって低い鳴き声みたいな音を出している。


 実は一体だけじゃなくて、別の角度から他三体近づいていた。

 エライライ&ブリックんは気付いてないっぽい。

 言ったら怖気づいちゃうかも。


「んじゃ~、頑張って~」


 あたしは立ち上がって二人の肩を優しく叩く。


「えっ!? サーシャさんは戦わないのですか?」


「う~ん? やばそうだったら助けてあげるよ~」


 肩触った時に《耳》と《目》を付けといたし。

 でも、二人ならなんとかなるでしょ?


 さて、隠れている三体を二人から引き離そう。

 サラマンダーは火が好きで冷気を嫌う。

 詠唱したり大きな魔法使うと目立つから、あえて詠唱代わりに口笛を吹く。


 《北風の唄》


 二人が気付かない範囲で冷たい風を吹かせた。

 寒がりのサラマンダー達はノソノソと隠れ場所から引いていく。

 そのまま、寒さから逃れようと動いている子たちを一か所に誘導した。

 このまま魔法でとどめを刺すのもありだけど、なんか、あの人なら多分そうはしない。

 なら、あたしも双剣を抜こう。

 きっと彼ならかっこよく、スタイリッシュに決める。


 《風の舞ウィンド=ワルツ


 素早く、まるですり抜ける様にサラマンダーの隙間を通った。

 踊る様に、目に見えない速さで魔剣で切った。

 そして三体のクビが落ちるタイミングと合わせて双剣を仕舞う。


 これでしょ。


 絶対に完璧に決まったでしょ。

 クールな表情で夜空を見上げるあたし。

 あの人が見たらなんて言うかな……?

 はぁ……

 切ない……

 そして、何かを忘れている様な……



《こっち来てる!こっち来てる!こっち来てる!こっちこっちこっち!! きゃーーーーーっ!!!! いやーーーーっ!!!!! サーシャさん助けてーーーーーーーっ!!!!》


 あ~。

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