第3話 ギルドの凄腕 ― 3

 サーシャ=イーズ。Sランク冒険者。

 Sランク冒険者とは、ようするにバカみたいに強い奴じゃ。

 Bランクまでは、一定数のクエストの達成さえすれば昇格できる。

 ギルドに新しく加入するメンバーはEランクで始まり、コツコツとクエストを完了する事によって、経験と名誉を集めて、徐々にランクを上げる。

 BからAランクへの昇進はもう少しややこしいが、実績があって評判が良ければ誰でもなれる。


 Sランクは違う。

 Sランクになる条件はただ一つ。『バカみたいに強くあれ』じゃ。


 今、『野良風』にはSランク冒険者が6名いる。

 本来なら、Aランクのエイブより、Sランクの子の中からギルドの後継ぎを任命するべきなのだろう。

 でもそんな事をしたらギルドがつぶれる。


 サーシャはその中でましの方じゃ。


 ……


「マスタ~、エレノア~、おつかれ~」


 夕方、部屋に入ってきた彼女は相変わらずニコニコとした笑顔をしていた。

 私服で来た。フリルが付いている白いシャツに黒ズボンを着ていた。長い茶髪は低いポニーテールにしばってあった。

 身長は儂より少し高い。170cm以上あるらしい。おっとりしたタレ目が目立つ美形な顔をしておる。


「よく来てくれたのぅ、サーシャ。まぁ座ってくれ」


 机の前に座る前にサーシャは椅子を儂に近づけて、座ると儂の机に肘を乗せた。

 エレノアにはお茶を入れてもらった。


「どうじゃ、サーシャ、探している人は見つかったかのぅ?」


 サーシャはクエストを受けてない時は突然姿を消した恋人を探している。ギルドに入った理由も、冒険者はあっちこっち行ける職業だと聞いたかららしい。


「い~や? 全く手がかりないまま~」


 ふわふわとした口調のままだが、口が尖って少し頬を膨らめた。


「そうか……残念じゃのぅ」


 儂はお茶をすすって、少し間を開けてから閃いたかの様に言う。


「そうじゃな、もしサーシャがよければ、ギルドからクエストを提示してもよいぞ。人探しの依頼ならDランクと言ったところか? サーシャがまだ探っていない街や地方に人を送って、のぅ?」


「いや~、手がかりもないのに~? 依頼なんて出せないよ~」


「その手がかりを探すクエストじゃよ。報酬金額は全部ギルドから出すぞ? サーシャにはお世話になっておるからのぅ」


「いいの~?」


 サーシャはもじもじと儂とエレノアの間を見た。


「じゃあ、お願いしよ~かな」


「任せてくれ、サーシャもギルドの仲間じゃ。力になってやりたい」


「ありがとう、マスタ~」


「ところで、エイブの話は聞いてるか?」


「あ~、知ってるよ~? 可哀そ~だね」


「じゃな。エイブのパーティーメンバーが彼の腕を治すため、エリクサーを作るそうじゃ」


「お~、いいね~」


「でものぅ、果たして二人だけで出来るかの?」


 サーシャは天井を見上げて「ん~」と唸ってから答えた。


「エリクサ~ってサラマンダ~の血が必要だよね~? エライライ確か炎魔法が鉄板技だし~、相性悪いんじゃな~い?」


 サラマンダーとは火を食らう魔物じゃ。エライライとはおそらくエライザの事じゃろう。


「やはり二人には危険か…… どうしたものかのぅ……」


「あたしが行くよ~」

 見上げたら、サーシャは頼もしい笑顔を向けておった。


「いいのか?」


「任せて~、エイブもギルドの仲間でしょ~? あたしも手をかすよ~」


「報酬は出せんぞ?」


「いいよそんなの~、スローンを探すの手伝ってくれるんでしょ~?」


「ありがとう、サーシャ!」


 笑顔で握手を交わし、サーシャにエレノアが準備した依頼書を渡した。


 サーシャが部屋を出るとエレノアが儂を横目に見た。


「お義父さんは今、Aランククエストの報酬額を、Dランククエストの報酬額と交換したって事であってる?」


「細かく言うと、Dランククエスト数回分じゃな。それも数か月わたって払う事になる。それでもかなりの安上りじゃのぅ」


「サーシャの優しさに付け込むのはどうかと思うわ」


「そんな目で見ないでくれ、これもギルドマスターの仕事じゃからのぅ……」

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