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「ねえ美南。外見も良いけど中身の方も大事なんじゃない?」
各フロアを回っている最中、何人かの人に声を掛けられるも、相変わらず興味を示さない美南にお節介だとは思いながら一応助言してみる。
「そうなんだけどさ。あたしって極度の面食いだから、初見微妙だと性格見るまでに意識がいかないの」
「へー、そうなんだ」
けど、予想通りの答えが返ってきたので、私は軽い返事だけすると、これ以上余計な口を挟むのは止めた。
結局歩き回った結果、美南のお気に召す人にはなかなか巡り会えず。
そうこうしていると店番の時間が来てしまったので、私達は教室へと引き返した時だった。
「なんか、やけに人多くない?」
いつの間にやら教室の周りには沢山の人集りが出来ていて、しかも、その大半が他校の女子高生達。
尚且つ、皆同じ制服を着ているということは、もしかして……。
「雨宮君久しぶり。あたしのこと覚えてる?」
「なんか、このお店雨宮君のイメージにピッタリだね」
「ねえ、写真撮ってもいい?」
やっぱり。
人集りを掻い潜り教室に入ると、雨宮君の周りには他校生の女の子達がひしめき合っていた。
流石は雨宮君。
前の学校の子達がここまで押し寄せてくるとは。
うちは女子が圧倒的に少ないから人気具合がいまいち分からないけど、普通校にいけば相当モテるんだということが、これでよく分かった。
それにしても、あの破天荒な雨宮君にあそこまで女子が臆せず寄り付くということは、もしかしたら前の学校では雰囲気が少し違うのだろうか。
マイペースな彼だから、環境が変わっただけで態度が変わるとは到底思えないけど……。
なんだか、凄く気になってきた。
「あの……すみません。前の学校では雨宮君ってどんな感じだったんですか?」
居てもたってもいられなくなった私は、思いきって近くにいた他校生の女子にこっそり尋ねてみると、何やら物凄い剣幕で睨まれた。
「え?なに?雨宮君はもうそっちのものだから、余裕ぶってるわけ?」
「…………へ?」
「いいよね。そっちは毎日彼の顔拝められて。うちらは眼福失ってモチベーションだだ下がりなんだけど」
「あの……そういうつもりで聞いたわけでは……」
なんだろう。
なんか、触れてはいけない領域に触れてしまった気がする。
そんな危機感を抱き、話が拗れる前にこの場からさっさと身を引こうとした矢先だった。
「てか、もしかして雨宮君の彼女?だから、彼のこと知りたいとか?」
「え?あの、全然違いま……」
「ここって女子少ないから、ちょっと可愛いだけでも結構目立ちそうだよねー」
「えと、人の話を聞いて下さ……」
「まさか、それであたしらの事哀れんでたりする?」
なにこの人達!?
釈明する余地すら与えられない!
あの質問一つで何故にこうも話が拗れてしまうのかよく分からないけど、周囲の殺気が怖過ぎて泣きそうになる。
「ちょっとあんた達いい加減にしなさいよ!」
すると、脇から美南が私を庇うように飛び出してきて、少しだけ緊張の糸が緩んだ。
「莉子が可愛いのは当然でしょーが。歪んだあんたらの顔鏡で見てみれば?それでよくマウントとろうなんて思うよね。傍から見れば痛過ぎなんだけど?」
「はあ!?あんたがそれ言うか!?」
けど、安心したのも束の間。
思いっきり波風立てる美南の挑発的な態度にこの場は収拾つかなくなり、今にも殴り合いの喧嘩が始まりそうになる矢先だった。
「おい。さっきから大人しく聞いてれば、誰がいつお前らのものになったんだ?」
突如脇から聞こえてきた雨宮君の静かな低い声に、激しい論争がぴたりと止む。
「そもそも全員知らねーし、騒ぐならさっさと帰れ」
そして、無表情で放たれた容赦ない一言はかなりの効果を発揮したようで。
一瞬にして勢いが萎んだ他校生の子達は、言われた通り大人しく教室を後にした。
「……やば。今のちょっとグッときた」
すると、暫く呆然と立ち尽くしていた美南から溢れた一言に、私はピクリと反応する。
「おい雨宮!お前なに追い返してんだよ!?良い金づるだったのに!あの宇佐美&木崎ペアに対抗出来んのお前しかいねーんだぞ!!」
すると、間髪入れずにクラスの男子達が雨宮君にくってかかり、今度は違う意味でこの場は騒然としだす。
いつもは彼に歯向かうことなんかしないのに、賞金の力なのか。
まるで悪徳経営者のように、なりふり構わず血走った目で卑劣なことを言って退ける男子達に私はドン引きした。
「すみませーん。そこにいる女の子二人指名したいんですけど」
その時、二十代前半くらいの男性客二人が中に入ってきた途端、突然私達の方を指先してきて何やら訳のわからないことを要求してきた。
「あの、何のことですか?」
まったく意味が理解出来ない私はきょとんとした目で尋ねると、何故か相手も同じ反応をしてくる。
「え?だって入り口にホスト•キャバクラ風カフェって書いてあるけど?」
………………は??
まさかと思い慌てて教室の入り口前まで戻ると、そこに立て掛けてあった看板を見て絶句した。
そこには”BAR風”の文字に二重線が引かれ、ホスト•キャバクラ風(お触り禁止)と書き直されてる。
「何これ!?いつの間に変わってる!?てか、文化祭の出し物としてアウトじゃないの!?」
「背に腹はかえられないからな」
美南の真っ当な訴えを、真顔で即座に跳ね除ける男子達。
一体この人達はどれ程お金に目が眩んでいるのかと。
同じ学生ながら呆れてものが言えず、私は美南達のやり取りを暫く黙って眺めていた。
「ねえ、さっきから待ってるんだけど。サービスあるの?ないの?」
すると、痺れを切らした男二人組は、若干苛立った様子で私達の方へと歩み寄ってきた時だった。
男達の行手を遮るように、いつの間にか脇に立っていた雨宮君の弾丸のような前蹴りが看板を直撃する。
そして、それは見事真っ二つに折れて地面に転がった。
「こんなふざけたサービスあるわけねーだろ。いいから、さっさと失せろ」
それから、ドスの効いた声で雨宮君は鋭い睨みをきかせると、その迫力に怖気付いた男達は何も言わず逃げるようにこの場を去って行った。
「あああああ!雨宮何してくれてんだよ!?せっかくの賞金を狙えるチャンスが!」
その直後、男子達の悲痛な叫びが教室中に響き渡る。
そこから非難の嵐が飛んできたけど、我が道を行く雨宮には全く響くことはなく。
それどころか怒りを露わにした瞬間、男子達は一瞬にして大人しくなり、折れた看板は補正され、店名は再びBAR風へと書き直された。
「……はあ。なんか疲れた」
ようやくほとぼりが冷めた頃、どっと押し寄せてきた疲労感に、思わず深い溜息が漏れ出る。
何やら大分賞金に振り回されているような気がして、果たしてこれが得策なのか疑問に感じながら、私は先程から微動だにしない美南に視線を向けた。
「あの……美南さん?」
何故か呼び掛けても無反応で、ある一点を見つめている先に一体何があるのか確かめようとした矢先だ。
「……ねえ、莉子。あたし、今莉子の気持ちがようやく分かった気がする」
何の前触れもなくポツリと呟いた美南の一言に、私は首を傾げる。
「誰かに守られるって……めっちゃそそるよね!」
すると、まるで恋する乙女のように目を輝かせながら雨宮君に視線を向ける姿に、私はある勘が働いた。
どうやら、美南の恋人探しはここで一段落つきそうな。
そんな気配を感じながら、私は今まさに恋に堕ちようとする美南を、その場で黙って見守ることにしたのだった。
※結局、賞金は櫂理&木崎クラスが獲得しました。
悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最狂犬の独占欲が強過ぎる~ Kore @Kore_story
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