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◇◇◇
「……り君。櫂理君、起きて」
遠いところで莉子の声が聞こえる。
体を揺さぶられているような気がするけど、この暖かくて心地居良い場所からまだ離れたくなくて。
意識は段々と覚醒し始めてはきてるけど俺は暫く目を閉じたまま寝たふりをする。
「おい、いい加減起きろ」
すると、傍から突如圭の冷めた声が聞こえた途端、思いっきり脇腹を蹴られ、強制的に叩き起こされた。
「もう、櫂理君一度寝たら全然起きないんだから。体も冷えてきたし、そろそろお家帰ろう」
痛む腹を抑えながら俺は舌打ちをして起き上がると、呆れたように俺をジト目で見てくる莉子。
……終わった。
その表情で瞬時に状況を察知することが出来、あのおっさんが言うように俺の夢は一瞬にしてここで覚めてしまった。
まあ、途中で寝てしまった自分が悪いんだけど。
「……で、どうだった?催眠状態の莉子さんとよろしくしてたんでしょ?」
それから、本人を前にして何やら期待を込めた眼差しを向けてくる圭に、俺はこれまでのことを振り返る。
「とりあえず、莉子に好きだって言ってもらって、膝枕してもらって……終わり」
「なんだ。いつもとそんな変わらないじゃん」
そして、起きたことをそのまま伝えたら、最もなことをツッコまれてしまった。
「よかった。それぐらいで済んで……」
しかも、莉子にとっても大したことではなかったようで。
安堵の息を漏らされたのが、何だか少しだけ腑に落ちない。
「またこんなことしたら今度は本当に怒るからね。さっきのおじさんにもちゃんと謝るんだよ?」
そう厳しく叱ってくる莉子に本当のことを話したら更に怒られそうで、俺は何も言わず素直に首を縦に振った。
「……あ、莉子さん。ちょっと」
とりあえず目的は果たしたので、ここで解散しようとしたところ。
突然圭は莉子の腕を軽く引っ張り、そっと耳打ちをしてきた。
「それじゃあ、またね」
それから、何事もなかったように笑顔で俺達に別れを告げて、この場を去って行く。
「あいつに何言われたんだよ?」
圭に耳打ちされて以降、暫く動かなくなった莉子に俺は若干苛立った声で話しかけた。
他の男と違って、圭とは付き合いが長いから多少莉子とのスキンシップは許容しているけど、今のは許容し難い。
「……秘密」
しかも、何やら少し恥じらうように俺から視線を外してきたので、益々気に食わない。
まあ、圭にそこまで嫉妬する必要はないだろうけど、俺にも言えないことがあるのはやっぱり嫌だ。
だけど、莉子はがんとして教えてくれなかったので、俺は諦めて帰路に着くことにした。
__こうして、莉子の催眠術作戦は成功したのか失敗したのか、よく分からずに終わった。
そして、あの雑居ビルで開催されていた怪しい講習会は、あの日を堺に二度と開催れることはなかったそうな。
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