第5話 狂戦士(司祭)は凶器で狂喜乱舞する
リリア=サクリスと名乗ったメイド――もといなりたて司祭は手早く着替えを済ませると置手紙の一つも残さずさっさと教会を後にした。
「いいんですよ、どうせロクな師匠じゃありませんし」
彼女の言によると、飲む・打つ・買うの三拍子そろった生臭司祭のようで、修行の一環だと称してはどこから仕入れたか分からないコスプレ衣装を着せては楽しんでいたらしい。
先の猫耳メイド姿もその一つなのだとか。
「小さい頃は、お慕いしていたのですけどね。孤児のわたしを育ててくれましたし」
だが、成長していくにつれクソ司祭の自分を見る目に危ない色が写っている事に危機感を覚えそろそろ教会から去ろうと思っていたらしい。
酷い話だ。
リリアの身の上話にいちいち胸糞悪さを感じながら、その犯罪者予備軍司祭に見つからないよう、表通りを足早に村はずれへと急ぐ俺達。
裏通りは閑散とした村でも治安が悪いようで、そういう場所に入り浸っているからあえて堂々と表通りを抜けるほうが見つからないのだそうだ。
貴族連中が揃いも揃って腐っているのは知っていたが、宗教までもが腐っていたとは。
確かに最近、高位の聖職者――司祭や司教の中には奇跡の一つも授かっていない者が多いとどこかで聞いた事がある。
この国、どっちに転んでも苦労するのは国民ばかりじゃねえのか。
そんなモヤモヤとした気持ちを抱きながら、人もまばらな表通りを素通りしていく。
◇◇◇
「妖魔――ゴブリンがいます」
無事に村を抜けて少し歩いた所でリリアが足を止めて静かにそんな事を言う。
神の授ける奇跡による索敵なのか、俺は全く気配を感じないのにリリアは街道の脇、木々の生えた辺りを凝視している。
これがもし幻覚や幻聴の類なら全力疾走して置いていこう、まだ村の近くだし。
そんな俺の心の内を知ってか知らずか、リリアは『ここで見ていてください』とだけ言い残して一人で当たりをつけた場所へ向かって歩き出す。
お役に立ちます、と豪語した以上本当に役立つところを見せたいのだろうしまぁ静観しよう。
もし本当に妖魔がいて、襲ってくるようであればその時は手助けすればいい。
「てい」
なんかしゃがんで小石か何かを拾ったかと思ったらノータイムで手の中のモノを木の生えた方向に投げつけるリリア。
「ギャッ」
あ、本当にいたんだなゴブリン。
投げつけたモノが金属にぶつかる鈍い音と同時に、潰れた喉から絞りだすような悲鳴が一回響いた。
悲鳴を合図に、物陰に潜んでいた小汚い装備に身を包んだ醜い妖魔がぞろぞろとはい出て来る。その数およそ二十匹。
さすがに司祭一人ではきつかろう、俺も加勢した方が良さそうだ。
などと考えて腰の剣に手を伸ばした瞬間、リリアが『跳んだ』。
「おりゃあッ」
いつの間にか右手に金属製のメイスを握りしめ、二十匹のうち恐らく
「必ず殺すと書いて必殺! 妖魔斬烈打!」
ぐしゃっ
無作為に選ばれた最初の犠牲者は脳天に金属の棒を叩き込まれ、悲鳴を上げる間もなく血と
それにしても、
斬撃なのか打撃なのか意味不明な技名(メイスなので打撃は確定である)を大声で叫んだあたり、無理やり着せられていたと言う割に本人もメイド服含むコスプレ、実はお気に入りだったのではないだろうか……。
『ギャアアアウ!』
同胞を瞬殺されたゴブリン共が一斉に雄たけびを上げ、リリアを牽制しだす。
しかし当の本人は何食わぬ顔で着地した瞬間、すぐ隣の一匹に向かってさらにメイスを素早く叩き込む。
「はっはー! 岩砕落命殺‼」
砕くの? 殺すの?
ボキっ
今度は顎の骨が砕ける音と共に、メイスを叩き込まれた一匹が宙を舞う。
「さらにッ! 跳打追撃突ッ‼」
また打撃なのか刺突技なのか意味不明な技名(やっぱり打撃確定である)を絶叫しながら、いつの間にか左手に握ったもう一本のメイスをまっすぐに宙に浮いたゴブリンの腹目掛けて突きだす。
あ、いや突き出したんだから突き技なのか? メイスなのに。
これは判定が悩ましい所だ。
と、思っていた一瞬前の俺の頭を殴ってやりたい。
腹にメイスが触れた次の瞬間、突き出されたメイスの先端が背中からコンニチワしたのだ。
………………は?
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