第2話 勇者マニアのリオン

 俺の名前はリオン。リオン=D=アシュリアータ。


 アシュリアータ家の三男にして自らの名声を追い求めし者……だったのだが。

 上の兄二人は先の魔王との戦いで見事に勇者と認定され、雄々しく戦い、そして華々しく散ってしまった。


 そして、次はきっと俺が勇者となって領民や国を救い、名声はうなぎのぼり……と言う想像していた未来は脆くも崩れ去ってしまった。


 真空管ハゲホモ野郎――もとい国王から急に呼び出しを受けた挙句、何とも意味不明な勅命を受ける事になってしまったのだ。


 ――大魔王を討伐するか、なんらかの方法で無害化し国難を退けて見せよ。なお、生け捕りにして王宮まで持ち帰った暁には莫大な褒美を授けよう。


 大魔王の生け捕りなんて普通に無理ゲーだって気づけよハゲ。

 それに魔王討伐には千人以上の戦力を投じておいて、さらにその上の大魔王の対応に俺一人なんて本気で家を取り潰しに来てるとしか思えない。

 つまり国から捨て駒宣言をされたわけだ、元々貧困にあえぐ国だし莫大な褒美と言いつつ、絶対に大したモノは出てこない。断言しても良い。


 この勇者マニアのリオン、知っているぞ。

 元々、勇者と言うのは多大な功績を称えて後世の人間がそう呼んだ称号だ。

 この国が行っているような占いで誰が勇者かを決めるというのは本来の意味での勇者ではないではないか。


 俺が何故名声ばかり追い求めているのか、それは後世の人間に勇者と呼んでもらいたいからに他ならない。


 そうだ、選定される事は重要じゃない。


 そしてこの状況は国難を退けるにはうってつけじゃないか?

 俺は一つ賭けに出る事にしよう。


 拳を握りしめ、王宮を出て城下町へと繰り出した俺は、まずはゴロツキ――この国には冒険者ギルドが無いので冒険者は存在しない、ギルドが無い理由は厚い雪で覆われる約半年はほとんど活動が出来なくなってしまうからだ――の集まる下町の酒場へと足を向けた。



 ◇◇◇



「お供しますぜ、リオン様」

 両翼のような大きな戦斧を担いだ体格のいい戦士がニヤリと白い歯をむき出しにして、俺の方へとサムズアップを見せる。


「ちょうど北東方面へ布教をしに行こうかと思っておりましての」

 白髪を蓄えた司祭が、自らが仕える神のシンボルを両手に抱えて、恭しく礼を捧げて来る。


「リオン様、ちょっと不器用だしアタシもついてってあげるよ!」

 後頭部で長い髪を一本にまとめ、弓を手入れしていた女の子も名乗りを上げる。


 ほらな、普段からしっかりと自分の評価を高める行動をしておけば、こういう時に便利なんだよ。


 下町唯一の酒場は平日昼間から喧嘩が絶えず、良く言えば下町、いや城下町で最も活気のある場所となっている。

 この国には組合制度こそないけど、この店にいるのは他国では冒険者と呼ばれる人たち。

 夏のこの時期は魔物の討伐依頼が結構あるので、酒場がギルド的に仕事の斡旋を行っていたりする。

 今日はちょうど付近で魔物が大量に発生したようで、酒場にいたのはこの三人のみ。

 しかし戦士、司祭、盗賊と必要な人材はそろっている。


 これなら、まずは大魔王の居城と言われている漆黒の城まで問題なく旅ができるだろう。


「皆、よろしく頼むよ」

 俺の払いで一杯ずつ好きな酒を注文させ、全てが揃った所で自分の杯を軽く前に突き出す。

「「こちらこそ」」

 木製のジョッキ同士が軽くぶつかり合って、かこんと乾いた音を立てる。


 世の中、やはりギブアンドテイクよ、俺が貴族だから一方的に命令を下すばかりでは領民の心は離れてしまう。


 俺は父さんからそう教わって育ってきたのだ。

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