8.店舗
ほかにいろいろ選択肢はあったのだけれど、私にはこの仕事が合っていたのだと思う。見た目とは違って重労働だし、長時間労働だし、寒い時期になってくると毎年指は悲惨なことになっているし、市場のある日は、深夜に近い時間から車を走らせなければならない。そして当然、正社員としての責任もある。
「フラワーショップ negai」。もう少し言えば、
大きくないけれど、小さな町で、言われればたぶんそこそこの人が、ああ、あそこかと思い出すんじゃないかと思う。それが、今私が働いている店舗の名前だ。
結婚記念日に奥さんに贈りたいけれど、何を贈っていいのか分からないという、一見気難しそうな四十代くらいの男性が、お客様だ。怖い顔をしているけれど、もしかしたら照れ隠しかもしれない。そういう人は、意外に多い。
気づかないふりをして予算を聞いて、おおまかなイメージを少しずつ拾い上げる。
頭の中で在庫と状態、色と色を組み合わせていく。どの角度から見ても美しく見える、四方見の構図を最速で考える。同時に、接客担当のアルバイトの
大口のリースの注文も入っているし、表の生花の管理もまだ終わっていない。
目が回るとまでは行かないけれど、やっぱり忙しい。けれどその忙しさが、私が強くなっていく証のような気がして、美香ちゃんとたまに愚痴を言いあいながらも、それでも私は好きだった。
明日は、朝から大荷物の配達がある。花屋は、重労働。
細く見えても、私の腕の力は、意外と強い。
※
帰って、資格試験の勉強をしていると、あの頃のことを思い出すことがある。
突然現れて、突然いなくなってしまった男の子のことを。
裏切られたって思った。悲しくて悔しくて、何も手につかなくなりそうになった。
それでも私は、現実に向き合わなければいけなかった。このまま変われない自分なんて、絶対に嫌だった。だから、頑張ってたし、頑張った。
短歌はそんな私の、唯一の息抜きだった。
「景色が、素材になるんだよ」
そんなことを言ったことがある。
「何でもない景色が、言葉に変わるの。すごくない?」と。
あのときユウくんと呼んでいたあの子は、どんな顔をしていただろう。
二人で初めて作ったあの歌は、あのときのノートに
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