第18話 何事もなかった朝



何事もなかった朝。


カーテンの隙間から、

普通の光が入ってくる。

昨日の夜が、

少し遠い。


今日は、

大好きな元彼の

仕事がお休みの日。


——それだけで、

朝が理由を持つ。


久しぶりに、

電話をかけてみる。


呼び出し音を聞きながら、

私は天井を見ていた。

昨日のことは、

思い出さないように。


「もしもし、

たかひろくん?

おはよう。」


声は、

思っていたより

明るかった。


「ねえ、

今日お休みだよね?

遊びたいな♡」


少し間を置いて、

付け足す。


「名古屋の私の家まで

お迎えきてちょ♡」


——朝は、

何でもなかった顔をするのが

上手だ。


夜のことも、

迷いも、

全部そのまま置いて。


私は、

ただ“可愛い声”で

電話をしていた。


それで、

今日が始まる気がした。

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