卯のゲーム/2023

 年初にて。

 年の瀬から慌ただしかった宴会場は今もおそらくまだ忙しいけれど、私のシフトでは小休止。代わりにカジノにホールスタッフとして入っている。とはいえこちらも書き入れどきなので、普段は入らないようなお客さんたちがルーレットに群がり、勝負師たちの賭け方はいつもより大胆で、そのぶん歓喜も落胆も悲鳴のようになって聞こえたりして、いつもと全然様子が違って見える。

 ここは樂逸烙座らくいちらくざ。宴会や挙式、その他諸々経営している複合施設だ。その中でも遊戯場は娯楽一色の施設で、かつあらゆる駆け引きが起こるのでスリリングな雰囲気も兼ね備えている。


「お飲み物失礼致します、」

「この子にしましょう」


 こうして、お客さんに飲み物をサーブしていたら突然ディーラーに指名されることもある。ううん、ない。何の話かと目を白黒させる私を置いてけぼりにして、このブラックジャックの台のディーラーを務める女性は愉快げに「Place your bet!」の掛け声をあげた。ゲームに参加する人たちは、なぜか品定めをするようにして私を見てからチップを賭けていく。何に巻き込まれているんだろう。


「No more bet. ではお約束通り、このゲームでどなたかお一人でも私に勝ったら、私と彼女がバニーガール衣装に着替えます」

「えっ!?」


 参加者たちが妙な盛り上がり方をしている。今年は卯年だからねえ、って、そんな風物詩みたいに言われても。

 ディーラーさんは一通りニコニコして、急に眼差しだけ真剣な光を湛えては「でも――私は強いよ?」と。水色の後毛を揺らしながら、どちらかといえば狩人のほうの声色で告げた。


 ゲームが終わる頃にはチップはすべて彼女が回収し、参加者全員の頭の上にはどこから出したのかうさぎ耳のカチューシャが飾られた。項垂れるうさみみお兄さんたちとそこに君臨するディーラーさんの図はちょっと……掛ける言葉が見つからない。えっと。


「その……ハッピーニューイヤー!」

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