第3話 包囲網と軍師の算段
ひまわり町の外縁、廃校となった校舎をリノベーションした私立学園。そこは理事長・大出渉と町長・木下貞子が結託して作り上げた、利権の城だった。
日向は、その校舎の影に潜んでいた。
「日向さん、準備はいいですか」
背後から声をかけたのは、宇都宮署の
「ああ。相手は片桐謙二郎警備部長が直々に動かしている『実力行使部隊』だ。油断するな」
日向はポケットの『謙信の軍配者』の角に触れ、心を落ち着かせる。
学園の正門には、県警が誇る特殊部隊の精鋭、竜と勝村が立っていた。彼らを束ねるのは、冷徹な指揮官・武田。彼らは警察という名の「軍隊」だ。その裏では、加納聡が不気味に動いている。変装と潜入の達人である彼は、捜査一課に身を置きながら、片桐部長の「目」として動く、通称『怪人20面相』。
「……日向。あんたの憧れだった円谷や柴原が生きていたら、今の警察を何て言うだろうな」
カラオケがぼそりと呟いた。円谷と柴原。伝説的な刑事組織『KSP』のメンバーであり、日向が刑事を目指すきっかけとなった男たちだ。
あくまでフィクションの人物だ。
「彼らなら、迷わず本丸に火を放つだろうさ」
事態を複雑にしているのは警察だけではない。
ひまわり町にある老人ホーム『陽だまりの家』。そこには、事件の核心を握る島田澄江が収容されている。彼女を介護するヘルパーの関谷葉月は、日向の密かな協力者だが、そこにも魔の手が伸びていた。
派遣会社『シックス・スター』の二代目社長・六角。彼は表向きの顔とは別に、七尾率いる「金星会」の残党を使い、ホームの地上げを強行しようとしていた。
さらに、この利権を狙って海外勢力も動く。
日系二世のブローカー、トニー佐々木が手引きしたのは、カンフーの達人・**余(ユエ)**と、マフィアの処刑人、アレック・ミック。
「日向さん、東武署の徳田署長から通信です。『これ以上は守りきれない。宇喜多が片桐と握った。今すぐ撤退しろ』と」
カラオケの端末が赤く点滅する。
「退けるか。謙信は言っている。『運は天にあり、鎧は胸にあり』……。今ここで退けば、時生の無念は永遠にひまわりの下に埋もれる」
日向は立ち上がった。
目の前の学園内では、教師の松尾葉子が、生徒たちに紛れて何かを運び出そうとしている。おそらく、貞子町長と大出理事長を破滅させる「裏帳簿」だ。
「カラオケ。竜と勝村の視線を逸らせるか?」
「30秒だけ、監視カメラと通信をジャックします。歌ってやりましょうか、最高の退場曲を」
日向は走り出した。
その手には軍配の代わりに、一冊の文庫本と、使い古した拳銃。
宇都宮の夜が、10年前の因縁を飲み込むために、深く、昏く沈んでいく。
勢力図の整理
日向陣営: 日向、カラオケ(唐桶)、伊藤、水野、徳田署長(支援)、関谷葉月
権力陣営(本丸): 木下貞子、大出渉、松尾葉子(?)
警察執行部(片桐派): 片桐部長、宇喜多課長、武田(特殊部隊)、竜&勝村、加納(20面相)
アウトロー・海外: 黒武者(中立)、六角&七尾(金星会)、トニー佐々木、余、アレック
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