第3話 食べ物の為ならエスコートもやぶさかじゃない

 リリエルの父親視点


 リリエルに友達が出来たらしい。


 たびたびその子を連れてきて庭で茶会をしているそうだ。


 そんな話を使用人から聞き、嬉しくなった。


 アッシュフォードは名門貴族家だが、現在貴族家の連なる上流階級のみがいる通り、(黄金通り)と呼ばれる場所に邸宅を構えていない。


 平民からすれば当家は敬いこそすれ仲良くなったりしづらいはず。


 そうなれば必然的に娘も遠巻きに見られ、友達は出来ないかもしれない。


 だから……というのもあり、貴族が多くいる王立魔法学校に入学するまでは友達なんて出来ないと思っていたが。


 うん、嬉しい誤算だ。


 どんな子か聞いても使用人はニコニコするばかりで教えてくれない。


 何か問題があるのだろうか。


 ふむ、リリエルが連れてこられるとなればそれほど広くない範囲、近くに貴族家はなかったはず。


 そうなればきっと平民の子だろう。


 なるほど、使用人達も口を紡ぐはずだ。


 しかし、私自身平民ではないが決して身分が高くない家からの婿養子だ。


 平民についても多少の理解を示している方だと思う。


 よし、今度偶然を装って茶会に行ってみよう。


 そう思って顔を出したのだが、確かに平民の子供だった。


 だが、問題はそこじゃない。


 相手は男じゃないか!


☆☆☆


 非常に気まずい。


 リリエルの父親がそのまま茶会に参加してきた。


 それは良い、だが俺を見る目がどう見ても敵を見る目なのだ。


 何故敵視されているのだ……なんて鈍感ぶったりはしない。


 先ほどの言動、俺の視線からリリエルを庇うように身体を寄せている感じ。


 うむ、恐らくだが俺がリリエルを狙っている雄とでも思っているのだろう。


 勘違いも甚だしいな。


 俺の狙いはリリエルではなく机の上の美味い食料だと言うのに。


 困ったものだ。


 だがその目的を馬鹿正直に言って、万が一リリエルが気分を害し、今後俺を誘ってくれなくなったら困る。


 黙っておくのが得策か。


「で、お前はどこの馬の骨だ」


 5歳相手にもう少し言い方があると思うが、リリエルだけでなくこいつのへそを曲げても今後困るかもしれないな。


 上手くやらねばなるまい。


 えーっと、目上への口の利き方は……。


「はい、私はゼノン。隣の家に住む王都の警備隊長カインとその妻ラティの子供になります。いつもお誘いいただいて感謝しています」


 少々棒読みになったがこんなもんだろ。


「……っ、立派な物言いだな。私はデューゴ、リリエルの父だ」


「どうも」


 丁寧に礼をしておいた。


 それを見たデューゴは何故か渋い表情を浮かべる。


「にしてもカインの息子か」


 ん? カインなんかやらかしたのかな。


 俺から見たカインは決して悪い奴じゃない。


 あんまり子供らしくない俺を、ラティと同じく愛してくれている感じがひしひしと伝わってくるし。


 仕事が終わって帰ってくると疲れているはずだが、よく構ってくれる。


 話しかけてくれるし遊んでもくれる。


 俺からすると遊んでくれなくてもいいんだが。


 まあ、新鮮だから悪い気分にはならない。


「カインには昔世話になった」


 デューゴがぼそりと呟いた。


 あ、世話になった方か。


 ああ見えてカインのやつ、外で評判悪いのかと思ったから安心したぞ。


「だが、カインの息子にしては顔が良いな」


 おい、やめろよ。まるでカインの顔が良くないみたいじゃないか。


 昨日夕食のスープに入ってたジャガイモに似てるけど、味があって人によっては好きな顔だと思うぞ。


 俺は嫌いじゃない、そもそもカインを嫌いじゃないからな。


「リリエル」


「なあに?」


「彼のどこが良いんだ」


「んー?」


 リリエルは口元に指を当てながら考える動作をする。


「偉そうだけど素直な所、あと付き合いが良くて優しい所」


「…………」


 俺偉そうかな、謙虚だったと思うんだけどな。


 でも優しいのは間違いない。


 蹴り飛ばされた時も魔法をぶっ放したりしなかったし。


 これでも過去、俺に無礼を働いたモンスターを消し炭にしたんだぞ。


「あと顔が良い」


 顔か、このおっさんも褒めてくれたし悪くないのか。


 カイン……じゃなくてラティに似てんのかな。


「顔が良いのはお前もだろ」


 褒められといてなんだがリリエルだって顔は整っていると思う。


 金髪碧眼で顔立ちも人間にしては品がある。


 容姿が優れていると言えばエルフ族だが、決して見劣りしないんじゃないか。


 まあ、今後歳を重ねてからどうなるかは知らんが。


 人の顔は成長で結構変わるらしいし。


 何て考えていたらリリエルがじっとこっちを見ていた。


「なんだよ」


「いえ、さらっと女性を褒めるのね。普段ぶっきらぼうなのに卑怯だなと」


「はぁ?」


 せっかく褒めたというのに何が卑怯だ、訳の分からん奴だな。


「いいか、お前がリリの友達となる許可はまだ未定にする。しっかりエスコートしリリを守るんだ」


「え、嫌だが」


 何で俺がこいつを守らねばならんのだ。


 そこまでしてこいつの友達になんぞなりたくないが。


「ほう、ならば今後は茶会も出入り禁止だな」


「何!」


 それは困る。


 この美味いクッキーやら紅茶やらを味わえないのは、非常によろしくない。


「むぐう……分かった、約束しよう」


「よし!」


 ようやくおっさんが腕組みを解いてくれた。


 やれやれ、まあ守ると言っても大した仕事ではあるまい。


「そういえばお父様、守ると言えば今度買い物に行く約束をしてたけど」


「勿論行くさ! 今度こそ仕事を終わらせるよ」


 おっさんがデレデレしてる。


 これが親ばかってやつか。

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2026年1月2日 08:00

元魔王の異世界生活~人間に転生した魔王はもう一度世界征服を目指す予定でしたが可愛い幼馴染のせいで人間生活を楽しむことにしました~ 白雪ななか @hatti

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