受付番号 1:CSM版だと思ったのに
今日も今日とて買取をやりながら中古品を売る日々です。客が次から次へと来て、時折買取金額に難癖をつけていくお客とかも捌きながらお客が落ち着いてきた時間帯になった。店内にはジャンク商品を求めてその足音が店内には静かに響いている。ジブンはその静けさの中で次のお客の波が来る前に買い取った商品を生産している。リユースショップでいう生産と言うのは買い取った商品をエタノールやブラシで綺麗にして袋に入れたりラップで包んだりして棚へ品出しをする。以前は壊れた商品も修理して出していたりもしたらしいが修理専門の人が辞めてしまったらしくひどく壊れている中古商品は現在は捨てるらしい。
ジブンはこの綺麗にして梱包する工程が好きだ。誰も話してこないし何より他のことへ思考を預けることができる。この間に小説のネタを考えたりして楽しんでいる。コトコトとビリビリと商品生産をしているといつもは落ち着いている時間に客が一人来た。買取カウンターへ立つと社員さんがお客の対応をしている。どこか楽しそうに話す社員さんはお客へ番号札を渡すと店内で待つように案内した。そしてこちらへ身体を向けるとジブンに向けて手招きしていた。この瞬間が一番苦痛だ。いや、リユースショップとしては間違っているのだろうが声を大にして言いたい。頼むからこちらの予期しないタイミングで来ないでくれ。ジブンは渋々向かう。もちろん顔た態度には出さずにカウンターへ向かう。社員さんがカウンターから退くとカウンターに置かれた買取商品を見せてきた。
剣?でも、どこかで見たことがあるような…
「見て、これ。」
「これ、なんですか?どこかで見たことがあるような……」
「これ多分仮〇ラ〇ダーのやつ。」
「〇面ライ〇ー?」
「いや、伏字変えたら意味ないだろ……そんなことはどうでもいいんだ。これ仮〇ラ〇ダーセ〇バーの聖〇ソー〇ラ〇バー……知ってるよね?何年か前の仮〇ラ〇ダーだけど知ってるよね?」
興奮気味の社員さんが質問してきた。もちろん知っている。令和ラ〇ダー二作目で小説家の主人公が〇面ラ〇ダーとして世界を救うために戦うと言った物語だ。序盤は理解ある二号ラ〇ダーとか世界観とかが評価されてたが中盤の仲間割れとか前半でCGを多用したせいで後半にかけての雑なCGやらが酷評されたりと微妙とかって一部から言われてしまった作品だ。ジブン的には良い作品ではあったと思ったが……いや、話を戻そうか。そう、目の前にあるのは紛れもない聖〇ソー〇ラ〇バーだ。赤の炎を模したエンブレムが付いているから主人公のものだろう。大きさもThe剣って大きさだ。何に興奮しているんだろうか。うちにも既に何個かある。子供向けのDX聖〇ソー〇ラ〇バーとかがある。……なるほど、本物かもしれないと言うことか。
「見てみて、ちゃんと重さもあるし……これ_本物って言っても過言ではないよ!」
「でも、社員さん…これ、コーナーに溢れかえっているやつと似てる気が……」
「そんなわけないだろう?ずっしりしてるし見て、ちゃんと切断できる!」
いや、切断できちゃまずいだろ。言葉をぐっと飲み込んでジブンもその聖〇ソー〇ラ〇バーを触らせてもらった。確かにいい感じの重さだ。紙を当てるとスルスルと真っ二つになった。でも…これは……本物なのか?でもそれならそれで問題だろ…たとえ物語が終わったとしても主人公の物語自体は人生として続いているはずだ。それに、これを持ってきた男は明らかに主人公のような風貌ではなかった。ローブで顔は見えなかったが背丈が若干低くも見えた。社員さんはベルトの方にも目を向けて本物かを確認していた。聖〇ソー〇ラ〇バーはまぁ〇面ラ〇ダーはベルトで変身するヒーローなのだがこの作品のベルトはバックル部分が剣を収める鞘となっておりそのバックルにライ〇ブッ〇という本型のアイテムを入れて剣を引き抜いて本の力を引き出して変身したりするのだ。作品に出ていたわけではないがかなり大きめだとお見受けする。ベルトの方も確かに本物感はある。
「いやでも、コレCSM版って可能性は……」
「特オタの予兆があったバイト君でもまだまだのようだね。SCM版が切れるわけないだろう?CSM版と言っても所詮は玩具さ。玩具で切断ができてしまっては販売はできないだろう?つまりこれは本物さ!ささ、その烈火を貸してくれい!これから本物だと証明してやろう!」
聖〇ソー〇ラ〇バー!
大塚明夫の声でベルトが喋ると社員さんは腰にベルトを巻く。自動で腰に巻かれると社員さんはどや顔で火炎剣烈火をバックルへ差し込み赤いワ〇ダー〇イド〇ックを原作のように開く。
ブレイブドラゴン!
かつて全てを滅ぼすほどの偉大な力を手に入れた神獣がいた…。
ワクワクしながらそのブックを閉じてバックルの右端へ差し込み火炎剣烈火を勢いよく引き抜く。バックルに差し込んだライドブックの二ページ目が開かれると音声が流れる。
烈火抜刀!
ブ~レ~イブドラ~ゴン~♩
しかし、社員さんは姿を変えていない。原作を完コピした変身ポーズだったがその姿は以前ヒゲ面の眼帯のままだった。時間が止まったように流れる。そして社員さんはまた同じように先ほどの工程をして仮〇ラ〇ダーセ〇バー変身しようと試みる。しかし結果は何度やっても同じ。音声が流れるだけで変身はしなかった。
「……偽物じゃねぇかぁぁ!」
そりゃそうだ。だって主人公が自ら世界を救う手段を売るはずがないもの。偽物で確定だ。しかし疑問が残る。なぜ紙が切断できたのか。重さもおそらくこの世に存在していればあのくらいの重量になるだろう。でも変身できなかった。いや、なに、聖剣に選ばれてないからといったらそうなのだが、意外と誰でも変身ができそうなものである。原作だと主人公は二代目セ〇バーで先代セ〇バーがいるくらいだから意外と我々でも道具がそろえば変身できそうなものだ。
社員さんはベルトを外しながらカウンターへ置いてすぐそばにあったPCで現在の相場を調べる。多分調べる基準はCSM版とかだろう。脇から見ていると市販(剣と魔法の世界線)でのブロードソードの相場を調べ始めていた。
「いや、何で剣の相場何ですか……」
「え?いや、よく考えたらここ異界の住人なら作れそうだなって思ってまずは剣の相場を調べる。で、あとからベルトの相場を調べて足して2で割ってそっから売値を決めて買取価格を決める。その方がいいかなって」
「はぁ、そもそも売らないでください。うち武器は取り扱っちゃダメでしょう?」
「いや、別にうちはそんな規定ないよ。武器取り扱いの免許取ってるし。売ってもいいんだよ。」
「めちゃくちゃ屁理屈。」
「いや、もうショックでショックで…やっと仮〇ラ〇ダーに変身できるかなって思ったのに。」
「社員さんもしかして今までも本物っぽいものが来たら変身できるか試してたりしました?」
「そりゃそうでしょ。男のだったら誰だって仮〇ラ〇ダーとかス〇パ〇戦隊とかウ〇ト〇マンとかに変身って一回は憧れるでしょ。」
それは否めない。まぁ、異界に居たらそれがかなってもおかしくはないだろう。いろんな世界線が混ざり合う世界だから、本物の仮〇ラ〇ダーとかいてもなんら不思議ではないからな。キーボードを高速で叩き終えるとすぐに買取価格を出した。
「まぁ、こんなもんかな。」
「買取6万ですか…まだ変身できるって思ってます?」
「もちろんさ。ここは異界だよ?いつ変身できるか分からんしね。売値は10万円さ。さて、コホン……受付番号099、099番のお客様~買取査定が終了しのでカウンターまでお越しください。」
マイクをとおした社員さんの声が店内へ響くと先ほどのローブの男はすぐにカウンターへと来た。
「買取、こんくらいですね。どうします?」
社員さんの質問に男は静かに唸る。顎に手を当てると、また時間が止まったかのように時間が流れる。そして二分程の長いような短い時間考えた男はボソボソと喋り出した。
「…………ごめんなさい。今回はキャンセルでお願いします。」
「かしこまりました。ではまたいつかお持ちください。いつでもお待ちしてます。」
男が店を出ていくとまたいつも通りの時間が流れ始める。意外とゴネずにキャンセルしたものだ。いや、6万円の買取価格は結構高い部類に入るがそれでも売らなかったということはあの聖〇ソー〇ラ〇バーはもしかして…
「案外さっきの人が主人公だったりして。」
「時間が経ったとはいえそんなこは……さすがにないですよね?」
「神のみぞ知るってやつだね。諦めようとしていた主人公が異界に迷い込んで自分のすべてをやり直すために変えようとするために売りに来たとかありそうだし。」
社員さんはそのまま踵を返してレジにある椅子へ座って棒の付いた飴を取り出して口へ放り込んでレジへ行儀悪く足を乗せて天井を見つめていた。原作の主人公は決してあきらめない性格をしていたはずだったが…いや、考えるのは無粋だな。偽物ではないにしろクオリティの高い偽物には変わりないわけで。ジブンもそのまま踵を返して生産に戻った。
諦めない主人公が手にした世界の後は、どうなったのだろうか。視聴者である我々は役目を終えた主人公の物語を創造するれば無数に二次創作できるが、真実はどうなんだろう。役者は役が終わって、視聴者は番組が終わり時折思いをはせるくらい。物語上ではどうなったのか確かに気になる。もしかしたら敵に破れてぽっきりと諦めた主人公はベルトを売って静かに消えるのかもしれない。
「ねぇねぇ見てバイト君!ア〇クル!ア〇クル来たよ!」
灰色のベルトを手に持ってテンションが上がっている社員さんをジブンはいさめるように声をかけた。
「偽物だとして腰に巻かないでくださいよ?敵の厄介なゲームに巻き込まれますよ。」
もちろん、ジブンが考えているこの思考すらも二次創作なのだが。
主人公は諦めるとどういった行動をとるのだろうか。
異界リユースショップ Theフリユース・オフ 河鹿 虫圭 @kazikatyukei
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