異界リユースショップ Theフリユース・オフ

河鹿 虫圭

プロローグ

朝、スマホのアラームの振動で起きる。眠い目なんてこすったら目ヤニが目に入って面倒くさいからそのままでお風呂場まで直行する。服を一枚ずつ脱ぎ、浴場に足を踏み入れる。シャワーを約10分で終わらせてタオルを腰に巻いて内臓を起こすためにウォーターサーバーへ向かって水をコップの半分まで入れ口へ運ぶ。そこからゆで卵を冷蔵庫から取り出して塩を振って食べる。食べ終わって柔軟体操をする。腰を重点的に伸ばすイメージで開脚ストレッチを済ませると布団へもぐり一時間の仮眠を取る。仮眠から起きて出勤時間までの30分をボーっと過ごす。出勤時間になったらバイクの鍵を取って駐車場へ行き原動機付自転車へ跨りエンジンを始動してバイト先へ向けて原付バイクを走らせる。バイト先へ着くまでのこの工程をすべて無心かつ何も考えずに行う。決して苛立ちを持たず、決して文句を言わず、決して決して何も感情を起こしてはいけない。今いる自宅から約15分後やっとバイト先についた。ここまで無心。ヘルメットをバイクに閉まって鍵を抜いて歩き出す。ボロボロの屋根の和風建築の建物の中へ入っていく。見た目は和風建築だが中へ入ると一変する。上り下りの四台のエスカレーターの横に幅の大きい階段。エスカレーターの関係者以外立ち入り禁止の赤いパイロンの間を抜けて動かないエスカレーターを登っていき、シャッターが半分くらいまで開いている電気のついているテナントへ足を踏み入れる。


「おはようございます。」


小さいがよく響くジブンの声に右側でポスレジに入金している社員さんが反応してこちらへ視線を向ける。視線は嫌いだ。仲良しでも家族でも誰でも視線を向けられるんのは嫌いだ。嫌悪がある訳ではない。恐怖があるわけでもない。恥ずかしさもあるわけではない。なんとなく他人という存在が嫌いなんだと思う。眼帯をしたヒゲ面は緩やかに気の抜けた笑みを見せて「はよ~」とこれまた笑顔のように気の抜けた声で手をゆるゆると振る。この声を聞くと今はバイトスイッチ、基仕事スイッチが入る。不織布マスクをしているのでぎこちない口元は見せずに目元だけをにこやかに見せて軽く会釈をしてスタッフルームで足早に歩き肩掛けの茶色のポシェットを鍵付きロッカーへ入れて藍色の皮のエプロンを手に取って腰でちょうちょ結びをして再び先ほどの眼帯のヒゲ面の方へ向かう。


「おはようございます。」


「ん~はよ~……んじゃ、いつも通り朝のお掃除よろ~」


レジの後側にある二つの長テーブルのジブンよりは低い壁に掛かっている布巾とエタノールの入った霧吹きを取って並んだガラスケースへ向かう。店内にあるケースは15台. カメラコーナー、ゲームコーナー、ジャンクコーナー、などいろんなものが入ったガラスケースを軽く拭く。客が触った指紋を綺麗にふき取る。昨日ジブンは休みだったので誰もガラスケースを拭いていない。指紋がびったりとついており汚くなっている。おそらく小さい子が多かったのだろう。それをすべて見ながら拭き取りながらさらにガラスケースのロックが甘くなってないかを確認しながら15台すべてのガラスケースを丁寧に拭いていく。この時間が楽しくて仕方ない。もちろんこれ以外にも楽しいが、人と話さず決められた仕事を誰にも何も言われずにこなすのが一番いいのだ。ガラスケースを拭き終えると商品の生産に入る。休んでいたからジブンの担当するサブカル系の商品が溜まっている。フィギュア、ホビーを物色してその中で土偶を見つける。


「社員さ~ん、これ、フィギュアですか?ホビーですか?」


「ん?あぁ、それね。えぇっと確か縄文人が来てて……そうそうフィギュアとして買い取ったよ。」


「いや、縄文人て」


「来てた来てた。何語かもわからないから勘と経験を頼りに買取したよ。」


縄文人。現代人に向けたらこのワードは絶対に差別とかいじめとか言わるような言葉だろう。だが、事実だ。だって、ここは異界なのだから。現世、幽世、異世界、その中でもまた過去、未来、現在、地獄、天国、極楽浄土とかどこか聞いたことのない大陸だったり島だったりの住人が来るのだ。様々な世界が混ざり合った世界、それがここ異界である。その異界にも生活があり、交通があり、そして店がある。コンビニ、病院、役所、スーパー、そして、つい100年くらい前からリユースショップとやらが出てき始めた。ここはそのリユースショップの一つだ。ジブンは神使という仕事をしているがそれは罰でお金は出ない仕事なのだ。死なない人間だと言ってもお金がないと生活ができない。だからジブンはここでバイトをしてお金を溜めているのだ。現世のリユースショップならゲームハード、カメラなんかを買取しているだろうがここでは違う、ここではゲーム、カメラ、PCに加えてその時代の物も取り扱っている。

ここは詳しく話そう。その時代の物と言うのはまぁ、呼んで字のごとく、書いて字のごとくなのだがここは現世、幽世、異世界が混ざり合っている。と言うことはその世界特有の物が来るのだ。先ほど言った土偶は縄文人が食料と交換で手に入れたのだ。もちろん渡すのはお金だ。この世界は特殊でお金が形を変えるのだ。土偶はこの店での買取価格だと500円だ。その500円を渡す際、異界のお金が変化して当時の500円分に匹敵する硬化、または価値のあるものへ変化する。今回はたまたま縄文人だったので500円分の食料へ変化したのだ。


ここは、異界リユースショップ フリユース・オフ。他の異界リユースショップも同じようなものだがうちは穴場と言われていてここで売ると高くかつ丁寧に買い取ってくれると言われているらしい。


……書き忘れるところだった。ジブンの名前は河鹿 虫圭。神様のもとで記録係としてカタレヌ・クロニクルを記録執筆している神使です。これはフリユース・オフでのジブンの日常を書き綴ったカタレヌ・クロニクルとは別の記録です。いや、記録と言うより日記に近いものです。


では、本日も開店していきます。

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