第5話 危機

 真夏のある日。リルは、胸元の大きく開いたワンピースを着て、町の裏の路地を一人で歩いていた。

 ところどころ、生地のないデザインで、肌がそこから見えてしまっている。

 丈は短く、太ももに少しかかるくらいまでしかなかった。



 実は、先ほどリルはロイと喧嘩をしてしまった。

 リルは、町中で見つけたこの服がどうしても欲しかった。

 すこしばかり派手なデザインだったが、綺麗な薄いコバルトブルーで、リルのとても好きな色だったのだ。スパンコールが散りばめられ、綺麗な川の流れのような刺繡が施されており、まるで天の川のようだとリルは感激していた。


 リルも、今年で十五になる。ちょっと大人の服装も挑戦してみたかったのだ。


 しかし、一緒に店先で見ていたロイに却下された。


「お前にはまだ似合わない。やめろ」

「何よ。ロイだって、裸にそんな内側が金色のジャケットなんて羽織っているじゃない」

「俺はいいんだよ、男だから。これも、お前を食わせるためという堅い目的がある。けど、お前はだめだ」

「なんでよ!いつも、似たようなものを着て踊っているわ」

「あれは、限度を越さないデザインのものを俺が厳しく選んでやっている。けれど、これなんかもう、下手をしたらほぼ全部見えるぞ?……ここは怖い町なんだぞ。どんな輩がどこに潜んでいるかもわからない。自らおいしそうになって、一体どうするつもりだ?」

「おいしそうって何よ。食べ物じゃないわよ」

「お前、まさか、その年で本当にわからないのか?」

「お兄ちゃん、口うるさい!リルは、リルの着たいものを着るの!」


 リルは、その場から全速力で走って逃げだした。

 少ししてから、ロイがいなくなったことを確認して、店でそのコバルトブルーのワンピースを買って店の中で着替えさせてもらった。

 店員さんたちは、何か暗い表情でうかがうようにリルの事を見ていたが、さほど気にはしなかった。


 念願のワンピースを着たリルは、軽くスキップをしていた。

 すると、そのままいつの間にかよく知らない路地に入り込んでしまっていた。


 不安になって、きょろきょろしながら歩いていると、後ろから、急に口を布で押さえられて気を失った。

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