第2話 回顧

 リルと二人、森の木の実を探しに行っている間のことだった。

 リルが、桑の実を大きな葉で作った籠に入れながら、こちらに笑顔を向けている時に、ふっと嫌な予感がし、ロイは身を固くした。


「リル。何かテントの方から変な声がしない?」

「誰の声?こんなに離れているのに、そんな声が聞こえるの?気のせいじゃない?」


 ロイは、今来た方角の方を睨んだ。

「お兄ちゃん……」

「シッ」


 ロイは、口元に右の人差し指を立てた。


「やっぱりおかしい。リル、全速力で戻るぞ」


 そう言って、リルの左手をつかんで道の悪い森の中を裸足でテントの方角へと走った。


「お兄ちゃん、リル、足が痛い」

「リル、おそらくそんな場合じゃない。さっき人の叫び声が聞こえた。おそらく父さんと母さんの声だ。それと……」

「何?」

「いや……とにかく急ぐぞ。間に合ってくれ、頼む」



 ロイはリルと走り続けた。

 あともう少しでいつものあの場所……という時に、ある少年と身体がぶつかった。


「お前は誰だ?」


 ロイは眉をひそめて少年に尋ねた。

 よく見ると、浅黒い色の肌に黒髪の短髪の少年は、頬に血をつけており、こちらをおびえたような表情で凝視してきた。

 隣には、いくつか年が下と見える少女がいて、その少年と固く手を結んでいた。

 少女の方は、顔色が白く身体が弱そうに見えた。肩まで伸びる黒い髪がひどく傷んでいた。何か暗い瞳でこちらを見ている。どちらも身体が異様に細い。


 少年の方が口を開いた。


「あの人たち君たちの親なんだね」


「……お前、一体何をした?」


 ロイは、その少年に詰め寄った。

 奥の少し拓いた場所に、ロイ達の父と母、二人が血を流して倒れているのが見えた。


「お父さん!?お母さん!!」

 リルがロイの手を放して、そのうつぶせで地面に倒れている二人の元へと駆け寄る。


「ごめん」

「なんだと?」


 その少年は、妹とみられる少女の手を引っ張り、踵を返した。そしてそのままその場から消えるように森の奥へと走り去った。


「ちょっと待て!くそっ。リル。息はあるか?」


 ロイは、少年を追うことを諦めて、父と母の容態を確認するためにリルの横に腰を落とした。


 呼吸を見る。感じない。次に脈を診る。触れない。

 リルが、懇願するようにこちらを見る。目に涙がたまっている。


 ロイは、リルに向かって首を横に振って、横たわっている父と母の上に崩れた。

 自分のものでは無い叫び声が、まるで遠くから聞こえてくるような気がした。

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