第六話 傭兵ライセンス取得

無事にアイベルサスコロニーに入港したジーベック、アレンとネオンは、宇宙戦闘用スーツから、一般的な洋服に着替えた。


アレンは、宙賊の船長が着ていたであろうくたびれたジャケットと、比較的真新しいシャツ、そして同じく真新しいズボンを着た。


シャツとズボンに関してはサイズが合わなかったのか、ほとんど着た形跡がなかったので、アレン的には安心だ。


問題はネオンの着る服で、当然ながら艦長室に女性用の服はなかったし、女性の乗組員がいた形跡もなかった。


仕方が無いので、艦長室で見つけたアレンと同じ男用のズボンとジャケット、そしてシャツを着てもらい、丈などはアレンが調節した。


「女性用の服を買うのは必須か、それとネオンって結構胸が大きいんだな」

「そうかな?」


「多分な、最初に選んだシャツのボタンが閉まらないのは、胸が邪魔だったからだし」

「なんかごめん」

「謝ることじゃないと思うけどな、それに小さい方よりは大きい方が俺は好きだぞ」


「胸の話?」

「違うよ、サイズの話だ。俺は小さい方より大きい方が好きってこと」


なかなかにデリカシーに欠ける発言するアレンだが、ネオンは軍隊育ち故か、羞恥心が低い為、ツッコミを入れる者がこの場には存在しなかった。



着替えた二人は、それぞれ剣とレーザーガンを装備して、アイベルサスコロニーに降り立つ。


そのまま宇宙港と目的の区画を、繋ぐ高速鉄道トラムに乗る。


「宙賊を討伐したら傭兵管理機構に報告するのか、傭兵ではなくとも賞金首なら懸賞金を貰える場合があると、なるほど」

「アレン」

「なんだ?」


袖を引かれたアレンは、ホロディスプレイから顔をあげる。


「見られている」

「ネオンの剣が珍しいんじゃないか?、レーザーガンはともかく剣を腰に履く奴は古巣でも珍しかっただろ」

「なるほど」


ネオンは、同じ車両の乗客たちをチラっと観察したが、アレンの言う通りレーザーガンを腰に下げている人間はいても、剣を持ってる人間はいなかった。


共和国軍でも、剣を持った特殊白兵戦部隊なるものの噂は聞いたことがあったが、剣を持っている軍人はあまり見かけなかった。


「何でも切れるから便利なのに」

「強化手術は高価だからな、でも傭兵には居そうだよな」

「いるかも。気を付けてね、アレン。剣を持ってる奴って首を切らないと死なないから」


「君たち強化人間は創作物に出てくる不死身の怪物かよ」

「しぶといって話、義体人間サイボーグはそうでもないから安心だけど」


「それはあくまで剣士目線の話だから、一般的な兵士の目線からすれば、義体人間も十分な脅威だよ」


こちらが出来ない動きをする点と簡単に死なないという点だけを見れば強化人間も義体人間も同じである。


一般整備兵であったアレンは、面と向かって戦闘したことはない。これからもそうでありたいと思っている。


そんな雑談をしている内に、傭兵管理機構マセナリーの建物がある区画に辿りついたので、トラムから降りる。


傭兵管理機構というだけあった武骨で、雑然としている雰囲気を想像していたのだが、訪れた傭兵管理機構マセナリーの建物は、大きな電光掲示板以外は、これといった特徴のないシンプルな構造の建物だった。


建物の中にいる人も多くはない、傭兵らしき人間数人と、マセナリーの職員と思われる人間数人がいるぐらいである。


「娯楽小説で読んだイメージと違う」

「それは創作物だろ?」


傭兵ライセンスの取得は、マセナリーの建物内に設置された専用の端末で行うことができる。


必要な情報は、名前と年齢、生年月日、虹彩データ、指紋、顔写真など、ただほとんどの個人情報の書き込みが任意で、必須だったのは、名前と傭兵として活動する船舶の登録ぐらいだった。


「結構大雑把だな」

「覚えてない、もしくは知らない人も多いからじゃない?、私は自分の生年月日は知らない」

「そっか」


手に入れた傭兵ライセンスは、ホロデータとして、それぞれの端末に送られる。


このデータはたとえ紛失しても、マセナリーに行き、名前と発行された傭兵番号を打ち込むことで、簡単に取り出すことができる。


一見セキュリティがガバガバに見えるが、それはライセンスランクが一番低いブロンズだからだ。。


ライセンスにはランクがあり、ランクごとに受けることができる依頼の規模が変わっていく、つまりはランクを上げれば、より報酬の高い依頼を受けられるということだ。


他にもランクを上げることによる恩恵は多いが、今はとくに関係ないので、割愛する。



次に行うのは、傭兵活動での報酬を受け取る口座と個人口座の開設で、これは対面で行なう必要がある。


「報酬金受け取り口座に個人の口座を連結することもできます」

「連結?」


受付の女性職員の言葉に、アレンは聞き返す。


「はい、傭兵は集団で活動することがほとんどですので、報酬金受け取り口座に個人の口座を連結することにより報酬金の分配が簡単になります」


つまりは報酬金受け取り口座に報酬金が振り込まれた時に、予め設定すれば自動的に個人の口座へ送金させることが可能ということだ。


(報酬金受け取り口座の中に、自分の口座があるみたいなイメージか)


「ネオン」

「私はアレンに任せる」


「それじゃあ、二人の個人口座を連結してくれ。それとこのコロニーに来る前に宙賊を討伐したんだけど、報告したい」

「畏まりました、少々お待ちください」


「どのような宙賊を討伐されたのですか?」


アレンはシルヴァーナとネオンが撃破した6隻の高速戦闘艇の戦闘記録と、宙賊母艦を拿捕した際の戦闘記録を提出し、救難信号を追ったら待ち伏せされたことと、宙賊母艦から脱出した宙賊たちは連邦航宙軍に、捕らえられたことを説明した。


「お二人が討伐された宙賊団には、悪質な宙賊団として、高額の懸賞金が掛けられています」

「いくら?」


現実的な話に、ネオンが食いつく。


受付の女性は、ホロディスプレイを反転させて、教えてくれた。


「2千万レボル」


レボルは多くの星間国家で使用できる電子通貨の単位で、2千万レボルはかなりの大金と言える。


「こんなに貰えるのか?」

「はい、この宙賊団の被害を受けた方が多いということです」


シルヴァーナとネオンは、容易く蹴散らしてしまったが、確かにやり方は悪質だったし、囮の航宙艦に気を取られている隙に、奇襲を受けたら、大損害を被る可能性は低くはない。


「とりあえず懸賞金は有り難く受け取る、早速開設した報酬金受け取り口座に振り込まれるんだよな?」

「はい、ライセンスを使えばアクセスできます」


アレンと、ネオンは、デバイスに入ったライセンスデータから、口座に移動すると、確かに2千万レボルが振り込まれていた。


「傭兵管理機構のシステムは全てライセンスを経由して、お使いになることができますので、ライセンスのホロデータは、適切な管理を行って下さい」


受付嬢に礼を言い、二人はマセナリーを離れる。


「思わぬ臨時収入を得たな」

「ん、運が良い」

「早速買いに行くか、ネオンの服」

「どこで買えるの?」


「えっと、少し歩いたところにショッピングモールがあるみたいだから、そこに行こう」

「おーけー」


二人はショッピングモールに、足を向けた。

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