第4話

 昼休みに入ると、小林が御弁当を持って俺の席の方へとやってくる。そして「貴幸、昨日のアニメ観た」


「いや、ゲームしていて観てない」

「なんだ、面白かったのに観てないのか」

「どんなアニメだったんだ」

「簡単に言うと、恋愛要素のあるタイムループもの」

「へぇー……」

「タイムループ出来る回数が三回までって決まっていて、ハラハラドキドキで観れたぜ」

「そうなんだ。今度、観てみるかな」

「そうしなよ」


 ──回数制限かぁ……俺は何回もタイムループしてるから、意識して来なかったけど、そんなの無い……よな? 急に不安になって来たぞ……。


 ※※※


 ──次の日の朝。俺はいつもの様に一人で学校に向かう。すると後ろから誰かが走ってくる音が聞こえてきた。鈴原さんかもしれない。俺は邪魔と言われる前に少し横に避け、後ろを振り返って立ち止まった。予想通り、駆け寄ってきているのは鈴原さんだった。


「鈴原さん、おはよう」

「──はぁ……はぁ……佐藤君!」

「はい!」


 鈴原さんが勢いよく俺の名前を呼ぶもんだから、ビックリして背筋がピンっとしてしまう。しかも、なんだろう? 鈴原さんの目が真剣で何だか怖い。


「噂聞いた!?」

「噂? 何の噂?」

「……私の噂……」

「鈴原さんの? いや、聞いてないよ」

「ならいい!」


 鈴原さんはそう言って、俺を置いて走って行く──鈴原さんの噂ねぇ……咄嗟に聞いてないって言ったけど、可愛いとか、性格が……とか色々聞いたことはあるな。でも、どの噂の事だ? あの様子だと最近の様だけど……そう考えていると、景色が途切れる。


「え?」


 今の会話に何かいけない言動があったか? 俺は何故か、小林と一緒に昼飯を食べていた……今までの経験上、未来に行くことは無かった。だからきっとこれは過去だ。


「なぁ、小林。さっき言ってたアニメ、観るからな」

「あ? あぁ、うん。観ると良いよ」


 当たりだ。これは昨日の昼休み……珍しいな、こんなに戻されることは今まで無かった。ここで小林に何か聞けって事なのか? だとすると考えられるのは……。


 俺は周りに鈴原さんが居ない事を確認すると「なぁ、小林。最近、鈴原さんの噂って聞いたことある?」って聞いてみた。すると小林は眉を顰める。


「あ、あぁ…………鈴原さんがお前の事を好きなんじゃないかって噂を聞いたよ。あ、でも、間にウケない方が良いと思うぞ。ほら、鈴原さんってあぁいう性格だし、色々と……」

「そっかぁ……分かった。忠告ありがとう」

「あぁ」


 なるほど、現実世界で小林が言っていたのは、ここに繋がるのか──次の日の朝、俺は鈴原さんと会って、途中まで会話を進めた。


「……私の噂……」

「聞いたよ」

「! 何で聞いちゃうのよ! そんなの忘れちゃって、良いからね!」


 鈴原さんはそれだけ言って駆けていく……俺は黙って見送っていた。タイムループは──来ない、正解だ。って事はだ。鈴原さんは俺のことを……いや、まだ分からないか。仮にそうだったとしても……俺はまだこうして楽しい日常を過ごしたい。


「もう少し様子を見てみるか」


 ※※※


 ──噂を聞いてから数週間が経過した日曜日。俺は欲しい雑誌があったので、本屋に向かった。日頃、雑誌を買わない俺は、配置がいまいち分からなかったので、奥の方へと進んだ。すると私服姿の鈴原さんを見掛けた。


「参考書コーナーか……」


 鈴原さんは丁度、買うものを決めたらしく、何かの本を持ってこちらに体を向ける。そこで俺と視線が合った。鈴原さんは本を持った状態でこちらに来るのを躊躇っているのか、立ち止まったまま動かなかった……が、ゆっくり俺の方へと歩いて来た。


「こんにちは、鈴原さん」

「佐藤君も買い物?」

「うん、雑誌を買いに」

「あ……そう」


 ん? 何だろ? 鈴原さんの声、いつもより元気が無いがする。気になった俺は「鈴原さん、もしかして体調悪い?」


「別に」

「そう、それなら良いけど……」


 鈴原さんは俺の返事を聞くと、黙って横を通り過ぎていく。その時、鈴原さんが何の本を買おうとしているのか気になってしまい、見てしまった。その本はアイドルになるために必要なものだった。


「佐藤君」

「なに?」

「この近くに公園があるの知ってる?」

「知ってるよ」

「じゃあさ……佐藤君の用が済んだら、そこで話を聞いてくれない?」

「大丈夫だよ」

「じゃあ、先に行って待ってる」


 鈴原さんから誘ってくるなんてビックリした……真剣な顔をしていたし、大事な話なんだろうな──俺は直ぐに用事を済ませると、待ち合わせ場所の公園へと向かった。


 俺は公園に着くとベンチに腰掛けている鈴原さんの横に座り「お待たせ」と声を掛けた。


「少し肌寒いから、手短に話すから」

「うん」

「私……昔から両親にあなたはアイドルになりなさいって言われてきたの。だから私はアイドルを目指すのは当たり前だと思ってた」

「……」

「だけど最近、それで良いのかな? って思う様になってきて……だって! 時間もお金も全てそれに捧げてきて、我慢ばかりの人生じゃない!」


 だからなのか? 俺がカラオケに誘った時にタイムループしたのは……。


「ねぇ、佐藤君。あなたはどうしたら良いと思う?」


 俺はその質問に頭を悩ませた──

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