第5話
「俺は……俺なら……もう少し様子を見るかな。直ぐに報われる時が来るかもしれないし」
「……あぁ、そう! 佐藤君も皆と同じことを言うのね」
鈴原さんは怒った口調でそう言って、スッと立ち上がると、帰って行ってしまった。これは確実にタイムループが来るだろう……少し様子を見ていると、タイムループは訪れる──俺は何度も言い方と変えて、同じ意見を通そうとした。でも…………先には進めない。
「ねぇ、佐藤君。あなたはどうしたら良いと思う?」
「アイドルになれたら、やっていて良かったと思えるかもよ? 続けてみたら?」
「……あぁ、そう! 佐藤君も皆と同じことを言うのね」
また鈴原さんはそう言って、スッと立ち上がる。俺は「……ちょっと待って」と引き留めた。
「なに!?」
「ごめん。本当の気持ちに嘘ついた」
「嘘?」
「本当は距離を置いたほうが良いと思う。でも、いまここで鈴原さんに距離を置けと言うのは、すべてを投げ出せと言っている様なものじゃないか? そう思ったら、言い出せなかった……ごめん」
「……あぁ、そう。分かった」
鈴原さんは冷たい雰囲気の口調でそう言って、スッと立ち上がると、帰って行ってしまった。タイムループの方は……来なかった。
※※※
それから一ヶ月が経過する。鈴原さんはあの日から、俺に話しかけてくることは無かった。それどころか、話し掛けようとする雰囲気を察してか、どこかに行ってしまうこともあった。正直、シンドイ……あの日の俺の回答は間違えだったのだろうか?
「はぁ……」と、俺は自分の席に座りながら溜息をつく。
タイムループはあの日から1回も来ていない。だからこの道は正解なんだと思う……だけど、本当にそうなのか? 小林が観たアニメの様にタイムループの使用できる回数が過ぎてしまっていたら? その可能性だって拭え切れない。 せっかくここまで上手くいっていたのに……。
俺が心の中で嘆いていると、「佐藤君」と、後ろから鈴原さんの声がする。俺は直ぐに後ろを振り返った。
「なに驚いたような顔してるの?」
「いやぁ……久しぶりだったから……」
「ふふ……」
笑った……あの鈴原さんが笑った!? 雰囲気もどことなく柔らかく感じるし、どうしたんだ???
「帰りにさ、カラオケ行かない?」
「え、良いけど大丈夫なの?」
「うん。じゃあ玄関で待ち合わせね」
「分かった」
──学校が終わると俺達は直ぐにカラオケ屋に向かった。まずは何か歌おうと鈴原さんが歌を披露してくれる。
「どう?」
「マジで涙出るほど上手いと思った」
「でしょ!?」
やっぱり今日の鈴原さんの雰囲気はちょっと違う。何があったのだろうか? そう疑問に思っていると、鈴原さんはマイクをテーブルに置き、俺の正面に座る。
「……ありがとう、佐藤君」
「何が?」
「あなたが正直にアイドルになるための活動から距離を置いた方が良いって言ってくれたから、ここ一ヶ月、見つめ直す事が出来て、スッキリすることが出来たんだ」
「あぁ……そうだったんだね。良かった」
「私、苦しいこともあるけれど、アイドルになるための活動を続けていくことにする」
「うん、頑張って」
「その前に……佐藤君。手をテーブルに置いて」
「手を?」
俺は言われるがままテーブルに右手を乗せる。すると、鈴原さんは左手を俺の手に重ねる。そして、マイクを右手に握った。
「アイドルになってしまえば恋愛なんて出来ないから、いまここで鈴原
「……」
まさかこのタイミングで告白されるなんて思わず、言葉を失ってしまう。
「やっと言えた……今まではアイドルになるために、出来るだけ人と深く接しない様に我慢してたの。だから恋愛についても我慢しなきゃって思ってて……でも、それが最近になって、抑えられなくて苦しくなってきて……」
「あぁ……そういう事だったのか。だから俺と一ヶ月も会話をしなかったの?」
「うん……気持ちを確かめたくて……身勝手でごめんなさい」
「あぁ、理由が分かったから大丈夫だよ」
「良かった。それで……返事は? まだ返事を貰ってませんけど?」
「もちろん、OKです」
「ありがとう!」
こうして俺は鈴原さんと握手を交わし、無事に結ばれる──この日を境に俺はタイムループをすることは無くなった。その後、どうなってしまうかは分からないけど……今はやっと手に入れた幸せを満喫したいと思う。
どうやら俺はツンツンしている可愛いクラスメイトを攻略するまでタイムループをしなくてはならないらしい 若葉結実(わかば ゆいみ) @nizyuuzinkaku
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