第8話 ノロット王国



鑑定で分かったことだが、このキャンピングカーのHPは一万もある。

しかも自動修復機能付きだ。多少の衝撃など、まるで気にする必要がない。


そのおかげで俺は、行く手を遮る木々を次々となぎ倒しながら、ほぼ直進する形で森を突っ切っていた。


「行け〜、レイド号〜!」


いつの間にか、レイはこのキャンピングカーに名前を付けていた。

しかも、かなりノリノリである。


それから三十分ほど走り続け、ようやく森を抜けることができた。

さらにしばらく進んだ先に現れたのは、大きな石造りの砦だった。


「マスター!あれが、ノロット王国です!」

「おお……」


近づくにつれて、その迫力がはっきりと分かる。

分厚い城壁に、高い見張り台。これなら魔物の大群が押し寄せてきても、簡単には落ちないだろう。


感心しながら門の前まで来た、その時だった。


門番がこちらに気づいた瞬間、明らかに様子が変わった。

慌ただしく声が飛び交い、門の内側から武装した兵士たちがぞろぞろと現れる。


「お、おい!それは何だ!」

「えっと……車です」

「車?聞いたことがないぞ!」


見たこともない物に警戒しているのか、兵士たちは一斉に武器を構え、完全に臨戦態勢に入っていた。

このままじゃ、下手をすると敵扱いされかねない。


――これは……降りて説明するしかないな。


俺は両手を上げて敵意がないことを示しながら、ゆっくりと車から降りた。


「こんにちは、門番さん。これはキャンピングカーっていう物で、とても速くて便利な乗り物です。別に危険な物じゃありませんよ」


そう言って説得していると、助手席の窓が開き、レイがひょこっと顔を出した。


「このレイド号は大丈夫ですよ。マスターの言う通り、安全です」


その瞬間、門番は目を見開き、次の瞬間には慌てた様子で姿勢を正した。


「こ、これは……アイリス様!?アイリス様がそうおっしゃるなら、問題ありません!」

「マスター、これでようやく国に入れますね」


 レイはほっとしたように微笑む。

 だが、門番は気まずそうに咳払いをすると、続けてこう言った。


「ただし……アイリス様。その“レイド号”という乗り物ですが、かなり大きい。門は通れますが、街中に入ると民衆が驚いてしまうでしょう」


門番は遠慮がちに視線を逸らしながら、


「ですので、できれば……王都の外に停めていただけると……」


と、丁寧に頭を下げた。


「分かった」


 俺は納得し、キャンピングカーをしまった。


「これなら大丈夫ですか?」

「はい。通ってよし」


 レイが居たおかげで、金など払うこともなくノロット王国の中へ入ることができた。


「なあ、なんで門番に様付けで呼ばれてたんだ?」

「それはですね〜。この国の王女様だからですよ〜。マスターは、王女である私と契約できて嬉しいと、改めて思いましたか〜?」


ニマニマした顔でそう聞いてくるので、


「全然」


俺は表情を変えずに答えた。


しかし、レイがこの国の王女様ね……。

食事だけで国の金が全部なくなりそうだけど、大丈夫なのか?

少し、この国の将来が心配になった。


だが、街の中は多くの人で賑わっていた。

野菜や肉を売る露店も並んでおり、国自体はかなり繁栄しているようだ。


「なあ、ちょっと金貸してくれよ」


 この世界で買い物をするにも、この世界の通貨がない。

 そこでレイに借りようとしたのだが……王女にも関わらず、お金を持っていなかった。


 レイに使われた調味料などを補充したかったが、それも叶わず、少し落ち込む。


「でもマスター。身分証を作るためにも、冒険者登録はしておいた方がいいですよ」

「そうなのか?」

「はい。冒険者ギルドで冒険者カードを作れば、身分証明になります。

 身分証がないと宿も取れませんし、行きましょう」

「分かった」


俺はレイに案内され、冒険者ギルドへ向かった。

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