第6話 無謀な駆け出し冒険者06
エドがソードとバックラーを構える。
アンカーリザードがゆっくりと距離を詰めてきた。
「少しだけ時間をかせいで」
私の言葉にエドが自信なさげに頷いた。
「何時間でもまかせろ」
私はその言葉を信じる。
そして、その期待に必ず!
手の中の銀片――魔具をひとつ強く握りしめる。
さあ、ここからがギャンブルだ。
ベットできるのは3つの魔具と私の才能。
全て枯れ果てても良い、今だけは咲き誇って。
「魔法よ!」
私の声に呼応した魔具。
握りしめた手の中で渦巻く奔流。
封印されていた術式が解放され、空間に解き放たれる。
その軌跡を必死に読み取った。
眼前に生まれる光。
私の人差し指くらいの大きさで、煌々と輝いている。
光属性初期魔法【光の矢(ルクス・テルム)】。
光を高速で打ち出す貫通力に秀でた魔法。
「いけ!魔法よ!」
エドも魔具を発動していた。
広範囲に火炎が踊り、消える。
彼は私達の弱点である広範囲攻撃を購入していた。
アンカーリザードに効果は無いだろうけど、目眩ましには十分なようで後退りをしている。
エドの選択は正しかった。
そのまま、お願い、もう少し時間を。
「貫けえぇえ!」
私の声で加速する光。
光線を描きアンカーリザードの首筋に衝突した。
岩よりも鉄よりも硬い皮膚の一片が砕ける。
あいつにとっては爪が割れた程度のかすり傷。
でも私には十分だ!
2つ目の魔具を取り出す。
眼前ではアンカーリザードが鋭い牙でエドに襲いかかっていた。
すんでで躱し、できる限り私より遠ざけようとしてくれる。
「魔法よ!」
再び巻き起こる魔力。
見ろ!見極めろ!
私の意思に体中の魔力が沸騰する。
再び現れる、光の矢(ルクス・テルム)。
そう、私が購入した3つの魔具は全て同じもの。
攻撃担当のエドが苦手な、貫通力のある初期攻撃魔法。
私はそれを選んでいた。
魔法とは数式である。
魔力を術式に通して変化させ、新しい理として再構築する。
だから生まれつき魔力を持つ人にしか扱えない。
逆に言えば、術式を理解すれば私はどんな魔法でも使える。
だから同じ魔具を購入した、記憶するために。
当代最高と言われる魔具職人の芸術的魔法。
感じられるのは残り2回。
私の全てをかけてコピーしてやる。
だからお願い、もう少しだけ頑張って、エド!
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