第2話 居候となった女の子
(あの夢の中に出てきた女の子とそっくりだ.....。改めて見ると.......普通に可愛い.......)
長く艶のかかった黒髪、小さな輪郭とくりっとした黒目、スッとした鼻やピンクがかった唇など、芸能人やアイドルなどとも遜色ない美貌を備えていることがわかり、おまけにスラッとした手足や何がとは言わないが出ているところは出ているというスタイルの良さも持ち合わせている。
徐々に目の前で起きている不思議な光景を理解し始めたとき、僕はその女の子に対する純粋な感情が心の中に溢れていき、いつのまにかその子の風貌から目が離せなくなっていた。
(いやいやいや!何見惚れてるんだ!僕は!!この子は立派な侵入者なんだぞ!ひとまずこういう時は警察に連絡すべきなのか。)
僕は彼女に見惚れていた自分を恥じ、一応住居への侵入者ではある彼女を通報するため、鞄の中にあるスマホに手を伸ばそうとする。
「ねぇ。ずっとここで黙ったままでもしょうがなくない?ひとまずそこにでも座ろうや」
彼女は支配していた沈黙を破り、リビングにあるソファーに腰を下ろし、まあ、座んない。座んない。と自身の隣の空いているところをポンポンと叩き、僕にそこに座るようにと指示をする。
(まるでこの家の主人みたいな振る舞いだな。まあ、いいか。)
「うん。それでよろしい」
僕が素直にそれに従い、隣に座ると満足げな笑顔でうんうん。と頷きを加える。
「ていうか。あなたそもそも誰なんですか?人が留守中に勝手に部屋に上がり込んで」
「誰って言われてもなぁ〜。まあ、そこはひ・み・つ☆ってことで!」
ウインクプラス満面の笑みでをしながら、そうやって何者であるかを彼女は雑に誤魔化したが、その美貌から放たれるそのあざとい仕草と笑顔に僕は完敗してしまい、それ以上問い詰めることはできなくなってしまった。
「あれ?ちょっと顔赤くない?あ!もしかして私のさっきの仕草が可愛くて反応しちゃったとかかなぁ〜??」
「う!うるさい!!」
「ふ〜ん。否定はしないだ」
「はぁ!?べ!別にそんなことで反応してない!」
(全く......いきなり人を揶揄ったりして.......。ほんとになんなんだ。この子は一体......)
僕の手元にある情報は夢の中に出てきたあの女の子とよく似ているということだけ。だけど、目の前の彼女はほんとにその子なのかは全くわからずじまいである。
そして、さっきの僕の反応に味を占めたのか。今度は僕の方へとスッと体を預けるように近づいてくる。
「ほんとに違うのかなぁ〜???」
そう言って僕の顔を下から見上げてくるそのあざとい上目遣いに対し、僕はまんまと彼女の狙いに嵌り、自分でもわかるぐらいに顔が真っ赤に体温を纏い始め、必死にその体を引き剥がそうとする。
「と、とにかく!話の続きだけど、なんでまた僕の家にいたの?何か用があってきたわけ?」
彼女のからかいをかわす目的から話題をひとまず戻し、正体を明かさないなら、次は僕の家にいる目的を探ろうと質問を投げかける。
それに対し、からかいを避けられたことに不満を持ったのか少し頬を膨らませながらも僕の質問にはきっちりと答える姿勢を彼女は見せる。
その頬を膨らませる表情に僕の鼓動が早まってしまい、この子の一挙手一投足に毎度ドキッとさせられる自分が実に恥ずかしい。
「う〜ん。実は私もよくわからないんだよね〜。なんか暗い場所を這い回るようにして歩いてたら、いつのまにかここに来ちゃったんだよね」
「いつのまにか?」
「うん。何かほんとに気がついたらここにいたんだよね」
彼女が言うには突然のワープのような現象によって、偶然に僕の家へと辿り着いてしまったというなんともありえないような出来事だ。
けれど、彼女のそれを語る表情からは特に何か適当な嘘を並び連ねたようなことは感じ取れないし、おそらく本当になぜ自身が僕の家に来てしまったのかはわからないのだろう。
「じゃあ。なんで僕は帰ってきた時に知ってる風な口ぶりだったわけ?」
ただ、彼女は僕が帰ってきた時は確かに僕という人間が帰ってくることを知っていて迎え入れたような言動をしていたことが少しひっかかっていた。
「あ〜。それはちょこっと君の部屋を見てた時に立てかけてあった家族との写真とか見て、それでこの家には君とお父さんがいるのかなぁ〜ってことだけはわかった感じかな」
(なるほど。そういうことか。)
「ねぇ〜。ていうかお腹すかない?ねぇ!今からご飯にしようよ!」
彼女はソファーに背中を預け、背伸びをしながら、晩御飯の催促をする。
僕はスマホで時間を確認するともうすでに19時台を大幅に過ぎており、思ったよりも長く彼女と話していたことに気付かされる。
(もうそんな時間か。まあ、食べてる最中でも別に聞けるといえば聞けるし、ちょうどいいか。)
「あ!あと。さっき思いついて決めたことあったけど、君に言うの忘れてたね」
彼女は思い出したように手を叩いて、決めたこととやらを僕に伝え忘れていたという。
「??決めたこと?」
「私、しばらくここに住むことにしたから。よろしくねぇ〜!」
「はぁ!?!?!?」
こうして、彼女のこの家での居候生活の始まりを迎え、ここから僕と彼女の新たな日常の幕開けとなるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます