第3話;テンプレ展開は、物理で解決。


「わあ、すごい……! 本当に石造りの町だ! アニメみたい!」


 ティアさんに引きずられるようにして到着したのは、大きな城壁に囲まれた町だった。

 入り口では強面の門番さんが立っていたけれど、

「こんにちは!」と元気よく挨拶したら、

「おっ、景気のいいお嬢ちゃんだな。猫耳可愛いぞ」と笑顔で通してくれた。


「門番さん、いい人でしたね。やっぱり挨拶は基本です!」

「リン、普通はもっと警戒されるものよ……。あなたの『無害っぽさ』が異常なだけ」

「え?私ってそんなに無防備に見えます?」

二人に頷かれました。


セレーナさんが呆れたように銃を肩に担ぎ直す。

そのまま私たちは、冒険者の拠点だという『ギルド』の扉を潜った。


「失礼しまーす!」

たのもう的な感じで元気よく挨拶します。

「あ、リン、あんまり目立たないように――」


セレーナさんの制止も虚しく、扉を開けた瞬間に酒場のガヤガヤした空気が止まる。

そして、お約束のようにガタイのいい男たちが立ち上がった。


「おいおい、なんだぁ? 見慣れないガキが迷い込んできたな。しかも金髪猫耳の極上品じゃねえか」

「ケケケ、そこのボロ刀。そんなナマクラで何を切るんだ? カボチャか?」

いや、カボチャは鈍じゃ切れないと思う。


「わあ、すごい! これ、ラノベで読んだことあります! 『テンプレ』ってやつですよね! 私、ゲームはやりませんけど、本は好きなんです!」

「てんぷれ……? 何をブツブツ言ってやがる」

私は目を輝かせていた。


そして、一番大きな男が、私の肩を掴もうと手を伸ばしてきた。

 瞬間、私の体が勝手に動く。部活の先生に叩き込まれた「間合いに入らせない」という本能だ。


「……あ、危ないですよ。えいっ」


 私は、その男の額に指を向けた。

 竹刀を持っていないので、とりあえずデコピンを放つ。


 ――ドォォォォォン!!


 爆音。

 男の巨体が、まるで大砲の弾のように真後ろへ吹っ飛んだ。


「ひぎゃあああああ!?」


 男はカウンターを突き抜け、そのままギルドの頑丈な石壁にズボォッ! とめり込んだ。

 壁には見事な人間型の穴が開き、男の足だけが力なくぶら下がっている。


「……は?」

 セレーナの口が開きっぱなしになる。

「……今の、デコピンだよね? 圧縮空気の塊でも飛ばしたの?」

 ティアが興奮してノートに「デコピンで壁を粉砕」と書き込む。


 私は青くなって、めり込んだ男の人に駆け寄った。


「す、すみません! 手加減したつもりだったんですけど! 大丈夫ですか!? 生きてますか!?」


 恐る恐る脈を測ってみると……。


「よ、よかったぁ……。気絶してるだけで、命に別状はないみたいです。いきなり人殺しにならなくて本当によかった……」


 私は胸をなでおろした。

 でも、ふと顔を上げると、ギルド中の冒険者たちが青い顔をして壁際まで後ずさっていた。


「な、なんだよあの猫耳……。デコピン一発で、ランクBの『剛腕のゴルド』を壁のオブジェにしやがった……」

「新手の魔王か!? いや、魔王はもう死んだはずだろ!?」


 セレーナさんがこめかみを押さえながら、私を隅っこの受付まで引きずる。


「リン、お願いだからもう指一本動かさないで。……受付のお姉さん、この『歩く戦略兵器』の登録、お願いしてもいい?」

「は、はいぃっ! 喜んでぇっ!」


 受付のお姉さんは、見たこともないスピードで登録用紙を差し出してきた。


「……あ、あの、セレーナさん。私、もしかしてまた何かやっちゃいました?」

「『また』どころじゃないわよ。……ねえティア、この子やっぱり今すぐ撃っていい? 制御不能になる前に」

「ダメだよセレーナ。次は『デコピンの衝撃に耐えられる首輪』を開発しなきゃいけないんだから」


 私は、壁に埋まったままの冒険者さんを見上げて、「やっぱり異世界って大変だなあ」と他人事のように思うのだった。


---


*現在の状況*


*リン: ギルドに激震を与える。デコピンの威力は推定・攻城槌ラム並み。

*セレーナ: 胃が痛くなり始めている。

*ティア: 研究対象が優秀すぎて、目が完全に据わっている。


「セレーナさん、変な二つ名で呼ぶのやめてもらっていいですか?」

「え?ぴったりでしょ?ね、ティア」

「言い得て妙」

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ゲーム 知識なしで始める勘違い無双冒険譚。ゲームクリア後の世界で初心者が暴れるのは規約違反ですか? maruki @akira168

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