第2話副作用は、猫耳に金髪。これって狙ってませんでした?

ぷはぁ! ごちそうさまでした! なんだか……イチゴと納豆を混ぜて炭酸で割ったような、すごい味でした!」


 私は空になった瓶をティアさんに返した。

 正直、味は最悪だったけれど、なんだか全身に力がみなぎってくる感じがする。


「ええ……。あれを飲み干して『ごちそうさま』なんて言った被験者モルモット

、初めてだよ。普通は最初の一口で気絶するんだけどな……」

「え?普通に飲めますよ、美味しくはないけど・・・」


 ティアさんが驚愕の表情でノートに何かを書き殴っている。

 隣では、銀髪のセレーナさんが銃を構えたまま、引きつった顔で私を見ていた。


「ちょっとティア、今の本当に回復薬なの? その子、見た目がとんでもないことになってるわよ……。やっぱり『撃っていい』?」

「だーめ。まだ観察中なんだから。……でも確かに、想定外の副作用リアクションだね」


「え? 見た目?」


 私は首を傾げた。

 すると、なぜか視界の端に、ふわふわした「何か」が入り込んでくる。


「……? あれ? なんか視界が広いっていうか、音がよく聞こえるような……」


 自分の肩に手を伸ばすと、さらさらとした指触り。

 さっきまで真っ黒だったはずの私の髪が、輝くようなプラチナブロンドに変わっている。


「へっ? 何これ、メッシュ? いや全染め!? 校則違反なんですけど!」


 さらに、頭の上に違和感を感じて触れてみると、そこには三角形の、温かくてピコピコ動く「何か」が二つ。


「……耳? え、これ、猫耳!?」


「それだけじゃないわよ。後ろ、見てみなさいな」


 セレーナさんに言われて振り向くと、お尻のあたりから黄金色の長いしっぽが、ご機嫌そうに左右に振れていた。


「ぎゃああああ! 生えてる! なんか生えてるー!!」


 私はパニックになって、その場でぴょんぴょん跳ね回った。

 体が軽い。心なしか、ジャンプ力も前世の三倍くらいある気がする。


「すごい……! 私の作った『獣化ポーション試作一号』、まさか髪色まで変えて完全定着するなんて! リン、君、やっぱり最高だよ。一生私の実験台になってよ!」

「嫌ですよ! っていうかティアさん、これどうやったら治るんですか!?」

「さあ? 毒じゃないから、そのうち治るんじゃないかな。三日か、三ヶ月か、あるいは一生か……」

「一生!?」


 私がショックを受けていると、セレーナさんがため息をつきながら、ようやく銃を下ろした。


「……まあいいわ。魔王軍の刺客かと思ったけど、ただの『変な子』みたいね。私はセレーナ。一応、この辺の治安を守ってるギルド員よ。で、こっちのマッドサイエンティストがティア」


なんか初対面で変な子扱いされました。


「リンです! 剣道初心者です!」

「ケン・ドウ……? 聞いたことない流派ね。さっきのデタラメな破壊力、本当は何の魔術を使ったのよ」


 セレーナさんが、私が腰に差したボロ刀『夜烏』を指差す。

 私は胸を張って答えた。


「魔術なんて使えませんよ。さっきのは、基本の『面』です! ちょっと気合が入っちゃっただけで」

「……『ちょっと』で森を更地にするやつがあるか。ティア、この子どうするの?」

「もちろん連れて帰るよ。こんなに面白い検体……じゃなくてお友達、放っておけないもん」


 ティアさんが私の手を取って、ぐいぐい引っ張り始める。


「あ、待ってください! 私、まずはこの世界のルールとか、ゲームのやり方(?)とか知らなきゃいけなくて……」

「ゲーム? 何それ、美味しいの? いいから行くよ、リン! 次は『肌が緑色になる薬』のテストもしなきゃ!」

「絶対飲みませんからね!!」


 こうして、猫耳が生えた剣道少女・リンは、トリガーハッピーな銃使いと、マッドな薬師に連れられて、平和すぎる(?)異世界へと踏み出すことになった。


---


リンの現在の状態:


外見: 金髪・猫耳・猫しっぽ(ティアの薬の副作用)

身体能力: 獣人化により、さらにパワーアップ(本人は気づいていない)

パーティ: セレーナ(銃士)、ティア(錬金術師)


「ティアさん、あちこち触らないでください。くすぐったいです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る