ゲーム 知識なしで始める勘違い無双冒険譚。ゲームクリア後の世界で初心者が暴れるのは規約違反ですか?

maruki

第1話プロローグ(気がついたら異世界ってどうなん?)

「……えーっと。ここ、どこ?」


 あたりを見渡せば、見たこともないような巨大なシダ植物と、空飛ぶ光るトカゲ。

「まさか、見たことない場所だ」


 ついさっきまで、私は放課後の蒸し暑い武道場にいたはずだ。


 私の名前はリン。中学二年生。

 三ヶ月前、「袴姿がかっこいいから」という軽い気持ちで剣道部に入った、ピカピカの初心者だ。


「ええっと、確か……。トラックが突っ込んできて、そのあと白い空間で、おじいさん……神様? みたいな人が『君、間違えて死んじゃったから新しい世界で頑張って』とか言ってた気がするけど」


 私はポン、と手を打った。


「ま、いっか! 終わったことは気にしないタチだし!」


 状況を飲み込むのは秒だった。

 周囲を見渡すと、足元に一本の刀が転がっている。


「これ、私の? うわ、ボロ……」


 拾い上げてみると、鞘さやは剥げ、柄つかの糸は解けかかっている。抜いてみれば、刃こぼれだらけで錆びた鉄の棒のようだった。茎なかごの部分には、辛うじて読める文字で『夜烏』と刻まれている。


「ヨガラス……? 変な名前。でも、竹刀より重いし、なんか『武器』って感じ。よし、とりあえず……」


 私は、まだこれしか教わっていない「中段の構え」をとった。

 学校の先生は言っていた。「剣道は礼に始まり、素振りに終わる」と。


「よし、まずは一本。め〜ん!」


 ふにゃふにゃの気合。

 道場なら「声が小さい!」と怒鳴られるような、緊張感のない一振り。


 ――ズドォォォォォン!!


「……え?」


 目の前の景色が、一瞬で「消失」した。

 刀を振り下ろした軌道の先、直径五メートルほどの範囲の木々が、まるで巨大な彫刻刀で削り取られたように消え去っている。その先、数百メートルにわたって地面には深い溝が刻まれ、遠くの山の一部が派手に崩落していた。


「…………えっ? ええっ!? なに、今の!?」


 自分の手元を見る。

 ボロ刀「夜烏」が、わずかに黒い煙を上げている。


「いやいや、今の私の『面』だよね? え、私、そんなに才能あった? それともこの刀、爆発したの!?」


 パニックになっていると、草むらからガサガサと音がした。

 現れたのは、腰に奇妙な銃を下げた銀髪の少女と、怪しい緑色の瓶を持った白衣の少女。


「……ねえ、セレーナ。今の……見た?」

「……見たわ、ティア。魔王軍の残党が戦略級魔術でもぶっ放したのかと思ったけど……」


 二人の視線は、呆然と突っ立っている私と、崩壊した森の跡に釘付けになっている。


「あ、あの! すみません! これ、私が弁償するんですか!? 私、転生したばっかりで一円も持ってないんですけど!」


 私が慌てて叫ぶと、銃を下げた少女――セレーナが引きつった笑顔で言った。


「……弁償とかそういうレベルじゃないわよ。あなた、何者? 今、何を使ったの?」

「何って……ただの『面』ですけど。剣道三ヶ月目の」

「めん……? 新手の古代魔術? ねえティア、これ撃っていい? 今のうちに仕留めておいた方が世界のためじゃない?」


 セレーナが物騒な手つきで銃の安全装置を外そうとする。


「待ちなよセレーナ。死なせたら解剖できないじゃない。……ねえ、君。この『超強力回復薬(試作版)』飲んでみて。内臓がひっくり返るような衝撃に耐えられるかテストしたいんだ」


 白衣の少女――ティアが、瞳をキラキラさせて紫色のドロドロした液体を差し出してきた。


「えっ、いいんですか? 喉乾いてたんです。ありがとうございます!」

「……え、飲むの? あ、これ本当に飲むやつだわ……」


 セレーナが呆れた声を出す中、私は「いただきまーす!」と、そのヤバそうな薬に口をつけた。



リンのステータス:


剣道経験: 3ヶ月(初心者)

覚えている技: 面、小手、胴

現在地: 崩壊した森(自分がやった)

所持金: 0


「神様アフターって無いんでしょうか?」

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