Case Report 48
あの後、我々取材班は何事もなく下山した。
Tさんは、筆者を助けてくれたその寸前まで、車で爆睡していたらしい。
つまり最初から筆者はあの化け物と一緒にトンネルに入ったという事だ。
あの化け物はなんだったのだろうか?
除霊に成功したばかりの、真夏に焼き芋を頬張る寺生まれのTさんに話を聞いてみた。
Tさん 「ただの浮遊霊よ。質の悪い。 普段なら誰も見ても見ない振りをするね」
ライター 「見ない振りですか?」
Tさん「そっ! 人間の本能的な危険察知能力って意外と馬鹿にならないのよ。 その直感には従いなさい? あんたはにぶすぎるから、特に気をつけるのよ?」
ライター 「あぁ……、あの時か」
Tさん 「あの時ぃ?」
ライター 「あぁいえこちらの話です。 ところで
Tさん「ないでしょ。ただ浮遊霊の溜まり場になってるだけ。 それこそあんなところ、いっぱいあるわ。 自殺の名所に興味本位で近付くのだけは、おすすめしないけど」
ライター 「つまり、自殺の名所という事だけがTさんとしては問題だと?」
Tさん 「うーん。言葉がむずかしいわね。 現世と幽世の線引きって言ったらいいかしら? それは場所だけじゃないのよ。 危ないと感じた事自体が、もうそこはレッドゾーンってこと。 まぁ感覚の話ね」
ライター 「我々凡人には、理解出来そうにありませんね(笑)」
Tさん 「まぁ分からない方がいいわよ」
そう言って、Tさんは言葉を結ぶ。
それ以上の話はするつもりはないようだ。
筆者は真意を尋ねようと、その澄ました小さな口元に意識を向ける。しかし、その真面目な顔には、焼き芋の粒がついていた。
そのままタバコに火をつけたTさんは一言。
「焼き芋の味がするわ」
締まらない言葉に筆者は思わず、口元が綻んだ。
◆
私は焼き芋を買うため、激安を標榜するディスカウントストアの駐車場に車を停めた。
良かった。置いてある。ちーちゃんが臍を曲げることは無さそうだ。
ちーちゃんが焼き芋を食べている間、レポートの草案を纏め終えると、車を発進させた。
またしても爆睡しているちーちゃんに退屈を極めた私は、先ほどの言葉を思い出していた。
「誰も見ても見ない振り」
Tさんを見失ったあの瞬間。
私の危険察知はちゃんと仕事をしていた。
見てはいけない物を見ないように無意識に視線を外したのだろう。
私は自分の鈍感さが、決定的な瞬間を逃していた事に身震いした。
皆様も、違和感を見逃さない様にして貰いたい。
貴方の隣にTさんはいないのだから。
――――――――――――――――――――――
はいという訳で、寺生まれのTさんパロディです。
連載前のお試し短編版ですが、如何でしたでしょうか?
続きが気になるなど皆様の感想、星などいただけましたら筆が早くなります!
寺生まれのちーちゃん! 羽柴56 @hashiba56
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