第2話 二度目のおはよう
2度目の朝は正午を少し回った時間だった。
雨はまだ止んでなく、先程より少し強くなった気さえした。
私は布団からモゾモゾと這い上がり、身体の不調に耐えながら台所へ向かう。
私の部屋は1DK。ベランダに抜けられる隣の部屋丸ごと洋服タンスにした。服を買うのが好きで、1Rに住んでいた学生時代なんかは服の部屋に住んでいたぐらいだった。
社会人になるということで意気揚々と1DKに引っ越した。引っ越す時には多少服は捨てた。 業者からは普通より多いと言われ、引越し代は予想よりオーバーした。
その時の私は少し多めに払ったけど、自分の未来を見据えながら幸せを感じていた。
そんな日のことが懐かしいと、這い上がって蛇口の水をコップに入れながら隣の部屋を見る。
今の私が着るのはせいぜい冠婚葬祭全てに使える黒のスーツ数着、上下セットの部屋着に下着、コンビニに行くためのジャージ。以上。
昔の栄光を隣に押し込めながら、私はコップの水を一気に飲み干した。
ふと目を窓に向ける、雨粒が窓に当たっては落ち点が当たって線になって下に流れる。
ボーッと見ていたら、私をいびるお局の顔が目の前に現れた。そのお局が窓に当たっては下に落ち、また降ってきては降りていく。
私は気持ち悪さに視線を外し、コップを強めに洗って籠に伏せ、洗い場から離れた。
雨の音が酷い、その音とともに内側から小人の木槌で殴られてるようにこめかみが痛む。細かくズキズキと頭痛がする。
いつも食べる安い食パンとオレンジジュースを口に突っ込み、身体に気だるい甘さを補給した。
少しだけ楽になる。
私はそのままスマートフォンに手を伸ばし、SNSアプリに意識をダイブさせた。
ブルーライトで目と脳を刺激されながら、指でガラスを上下に撫でて画面を切り替える。
とは言え平日の昼過ぎ、いるのは公式広告が半分だ。 あと残り半分の情報は。
……どうしてだろう、数ヶ月前までは心躍ったり、笑ったり出来た情報が文字列にしか見えなくなっている。
別の世界にあるなにかに見え、文字すら頭で復唱が出来ない。 同じ日本語なのに、私には異国の言葉に見えてしまう。
言葉がわからず、独りになった気がする。
私以外の全てが、明るい。
つまらない。
そう感じた私はSNSを閉じて現実に浮上する。
卓上時計をちらりと見たあと、窓に目をやる。SNSにダイブして3時間程度経っていたようで、雨は小降りになっていた。
頭痛もダルさもキツさも、朝ほどではない。 頑張れば仕事が出来る程度、しかし頑張らなければ明日は元気に仕事出来るだろう。 そんな状態。
けどそんなに強くない、そんなに芯なんて持っていない私はメールアプリを開いた。
画面に映る【お祈りメール】。
業務と並行していた転職希望先からの冷たい通告に、戻りつつあった体調が2手下がった。
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