新年あけましておめでとうございます
「うわ〜。すご~い」
娘が肩の上でそう言った。
身を切るほどの空気の中、海から煌々と輝く日が昇ってきた。
これは凄い。自分の人生の中でも1、2を争う綺麗さだ。
「凄いじゃん。本当にきれいだよ今年は!」
横で妻も興奮している。
眠い目を擦りながらここまで運転してきたかいがあるというものだ。
日が完全に顔を出し、周囲も照らし始めるまで飽きずに私達はずっと見つめていた。
初日の出を見終わった後は近くの神社へ初詣をしに行った。
そこそこ大きな神社ということもあり、もう既にある程度の人だかりができていた。
「おさいせんちょうだい」
財布から娘に5円を手渡す。
「二回お辞儀した後、また二回拍手してお願いするんだよ。分かった?」
「わかった!」
賽銭箱に10円を投げ込んだ。
二礼、二拍手。
今年も私たちの娘が健やかに成長しますように。
思いを込めて一礼した。
「おみくじ引こ!おみくじ!」
もう願い終えた娘がせかした。
この神社は今時珍しくなった振って棒を出すタイプだ。
娘が一人で頑張って振った棒には77番と書いてあった。
「やったあ!大吉!」
この神社は大吉が出やすい。これはこの土地に住んできての経験によるものだ。
はしゃぐ娘を見ながら自分のおみくじを開いた。
「えっ!」
「どうしたの?」
「凶だ‥‥‥」
「可哀想‥‥‥。私は中吉」
凶なのに悪いことしか書かれていない。
失物は更に無くすなど散々だ。せめて見つからないであってほしい。
こんなもの結ぶに限る。
縄にしっかりと御神籤を結びつけた。
「お年玉ちょうだい!」
恐れていたことが起きてしまった。
用意は勿論してあるが出来れば毎年忘れていてほしい。
「はい。お年玉だよ」
「わあい!ありがとう」
幸せそうに笑っている。この顔が見られるならばお年玉をあげるのも悪くない。
「正月がずっと続けばいいなぁ。お年玉ずっともらえるし」
「あげません。そんなにあげたらわが家が破産しちゃうよ」
「それでもずっと休めるから正月のままがいいな~」
その点では同意だ。
ずっと休みで生活できるならそれほど幸せなことはない。
だが現実は非情だ。正月もあと3日もすれば過ぎ去ってしまう。
「そうだね、お父さんも毎日正月がいいな」
「でしょ~。おいしいご飯もいっぱい食べれるし」
「うん。‥‥‥何だか眠くなってき来た」
昨日からほぼ寝ていないせいか。唐突に私の体に眠気が襲った。
「ちょっと一回寝る」
「私も‥‥‥」
妻も眠たいようだ。やはり寝ていないのはまずかったか。
「じゃあ少しお休み」
「お休み」
眠気なんてなさそうな子供に別れを告げて寝室に向かった。
これだけ起きて眠くないなんて若いのはいいことだ。
ベッドへ倒れこむように寝ころんだ。
‥‥‥。あれ?
大晦日なのにうっかり寝ていたようだ。
危ない危ない。これじゃ眠そうな目で「今年は起きる!」と宣言した娘にも負けるではないか。
「それでは皆様。1年間有難うございました。2026年もよろしくお願いいたします!」
テレビのMCがそう言って大晦日の特番が終わった。
夜空に除夜の鐘が厳かに響いた。
正月はどのようにすごそうか。何処にも出かけず寝正月にしようかな。
新年あけましておめでとうございます。 ネオローレ @neoro-re
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